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〜無税生活を合法的に送る方法〜

無税生活を合法的に送る方法

PT[パーマネントトラベラー]のすべて

Permanent Traveler

はじめに

これまで安全、安心と考えられていた日本が、天災、原発、金融危機、財政危機、不安定な政治 等々、あらゆる側面で危機的状況になり、リスク要因が増えています。これまで高度成長とともに 培ってきた資本の蓄積という大きな支えがあるものの、根本となる日本のお家芸「安全、安心」が、 今日本から消えつつある現状において、私達はこれからどういう方向を目指して生活し、家族を守 り、会社を守り、自分を守っていくか。真剣に考える時が今来ています。

「東京から日本を元気にする」というスローガンで2020年の東京オリンピック招致に成功し、日本 全体が明るいムードにはなってきた様相ですが、実はこのオリンピック景気もわずか6年で終わって しまいます。一時のカンフル剤にしかならないばかりか、雰囲気に踊らされ時間ばかりが経過し、気 づいたら「後の祭り」という状況に、確実に日本人は向かっているのです。

この6年間、オリンピックを好機と捉える日本政府がやろうとしていることに従順に従うか、また は、この6年間をリスクの分析にあて、現状のリスク、7年後に迫るリスクを回避するために今動く かで、今後の人生が大きく変わってくるのです。

世界は境の無い時代に突入しています。EUでは国境はなくなりました。EU加盟国であれば、国の 行き帰りは自由なのです。

TPP、これもあらゆる商品の物流の規制をなくそうとしています。つまり、自由にやりとりしま しょう。という動きです。輸入関税は、その国の産業や農業等を守るために作られた利己的な制度で す。その利己的な制度をなくすのが、TPPです。

しかし、世界中で自由に売り買いできる反面、弱い者は淘汰されてしまいます。世界はそういう 弱肉強食の時代に向かっていき、その波に良いか悪いかは別として、進んで行っているのが世界であ り、日本なのです。

そして、その波に境がなくなり国も考え方も制度もノンステップでスムーズに行かせようとしてい る力があり、弱い者には残念な、強い者はさらに強くなる、そういう仕組みに世界は整備されていく 中で、我々は何をしなければならないか。

日本の安全神話が揺らいでいます。

はじめに

簡単な話ですが、リスクを回避すれば、それだけで強くなります。リスクをまともに受けた人から 見ると、相対的に強くなります。そのリスクが日本中には地雷の如く埋っているのが今の日本だとい うことを、皆さんが手に取っている私のこのレポートを読めば分かるばかりでなく、そのリスクを回 避する方法もお伝えいたします。

「 パ ー マ ネ ン ト ト ラ ベ ラ ー ( P T : P e r m a n e n t T r a v e l e r 、 終 身 旅 行 者 )」

この制度は、究極のリスク回避策、そしてこれからのグローバル化時代に則した生き方として最 善、最強の制度と考えています。しかも、このPTを大いに利用する環境がやっと整った。というの がここ数年になります。とてもいいタイミングです。

PTとは、国籍・ビジネス・居宅・資産運用・余暇において、日本を含め海外の国々を使い分ける生 活スタイルのことです。

もともとPTは欧州の富裕層たちが過大な税負担を逃れるため、試行錯誤の末に考え出したもの でした。つまり節税の意味合いが強いものでした。

しかしPTは節税目的だけでなく、テロや政治、経済、自然災害などのリスク回避も可能にするラ イフスタイルです。さまざまなリスクが降りかかってきている中で、私たち日本人にとりこれからの グローバル時代、ボーダレス時代に大変有効な制度となります。

あなたにも、ライフスタイルの選択肢として、究極のリスク回避策「PT」があるということを知っ ていただき、PTを正しく理解し、来たるべき時代に備えていただきたいと思います。

もくじ 第 1 部 リスクを知り、自ら行動を起こすために 8

1 日本はリスクがいっぱい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

2 制度破綻のリスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

1. 年金 10 2. 国家債務 11 3. 東京オリンピック 12 4. 日本の政治外交 13 5. 為替 14 6. 高齢化 16 7. ストレス 18 8. 生活習慣病 20 9. テロ 22 10. 教育 22 11. 日本の競争力の低下 25

3 もっと怖いのは自然災害のリスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

1. 地震 27 2. 津波 29 3. 火山 31 4. 地震大国の原発リスク 32 5. 台風 33

6. 洪水 35 7. 土砂災害 36 8. 自然災害の複合 36

4 しかし日本は素晴らしい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

第 2 部 PT という生き方 41

1 PT(パーマネントトラベラー)を利用する ・・・・・・・・・・・ 42

1. 何のためにPTになるのか 42 2. 事業のためのPT 43 3. 老後のリタイアメントのために 45 4. 自然災害回避のために 51 5. 節税のために 53 6. 子どもの教育のために 56

2 PT の原理の概要「5 つのフラッグ理論」・・・・・・・・・・・・・・ 62

1. 複数の国を使い分ける 62 2. 「5つのフラッグ理論」 62 3. 第1のフラッグ「国籍を持つ国」 63 4. 第2のフラッグ「ビジネスをする国」 64 5. 第3のフラッグ「居宅(居住権・永住権・市民権)を持つ国」 66 6. 第4のフラッグ「資産運用を行う国」 66 7. 第5のフラッグ「余暇を過ごす国」 69

3 タックススヘイブンの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

1. タックスヘイブンの活用 72 2. タックスヘイブンの種類 72

第 3 部 PT ライフを始めよう! 74

1 PT になるために ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

1. 優先順位 75 2. PTになるために考えておくべきこと 77 3. 子どもの教育は? 80 4. どういう国を選べば良いか? 81

第 4 部 PT ライフを楽しむ秘訣 84

1 PT ライフの基本的考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85

1. PTライフとは、モノ・金・時間・場所から自由になること 85 2. 他人と自分を比較しない生き方 89 3. 上手に行動や思考を転換する方法 92 4. 場所と時間に縛られないで働く 97

2 PT ライフ 6 つのステージ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101

1. PTライフ6つのステージ 101 2. 第1ステージ:「ベースをつくる時期」 101 3. 第2ステージ:「PTライフの方向性を模索する時期」 102 4. 第3ステージ:「未来につながる実績を残す時期」 102 5. 第4ステージ : 「PTライフへの移行期」 103 6. 第5ステージ : 「PTライフの実践」 103 7. 第6ステージ : 「PTライフのシェア」 104

3 PT ライフスタートのためのトレーニング ・・・・・・・・・・・・ 105

1. 劇的に環境が良くなってきた 105 2. どこにいても仕事ができるのがPTスタイル 106 3. PTライフの思考法 110

第 1 部 リスクを知り、自ら行動を起こすために

1 日本はリスクがいっぱい

今、私たちが住んでいる日本にはたくさんのリスクが存在しています。

日本の国家や政治家は本当にあてになりません。また最近起こった東日本大震 災と原発事故。これは、天災と人災が重なり、さらに政治家の判断ミス、不作為 も加わり、日本で、世界でも相当問題視された「危機」として、世界史に残るも のになりました。世界中に「日本って本当に大丈夫なのか?」、「日本って本当の ことを発信しているのか?」、「都合の悪いことは隠しているのではないか?」と いろいろなことを考えさせられました。

世界一安全と言われている日本に、安全ではない状況が次々と発生してきてい る現状において、まずはそのリスクを把握しそれを避ける方策を考えた時、ひと たび世界に目を向けると、「実は日本にいるよりいい環境、状況が整備されてき ている」ということが分かると、一気に目の前が明るく開けたようになります。

日本はいいところもたくさんありますが、同時に多くのリスクが露呈するよう になってきました。日本人自身がそのリスクを知らないこと自体、それが一番の リスクかもしれません。それが、世界における日本のリスクと言えるかもしれま せん。

PTについて考える際、必ず押さえておきたいのは、現状把握です。まず、日 本は今どういう状況なのか? どんなリスクを抱えているのか? どんなリスク が起こり得るのか? 考えていきましょう。

2 制度破綻のリスク

1. 年金

日本の年金は、『おみこしを担ぐ方式』で、若い人が高齢者を支えるという仕 組みをとっています。これは、賦ふ 課か 方式と呼ばれ、20歳~64歳までの現役世代 が納めた年金保険料で、65歳以上の年金給付金を賄う方式です。 少子高齢化に 伴い、神輿を担ぐ人の割合がだんだんと少なくなり、次第にお神輿を担げなく なってしまいます。

・2000年では、神輿の担ぎ手は3.6人 ・2025年には、神輿の担ぎ手は1.8人 ・2055年には、神輿の担ぎ手は1.2人

お金に換算すると、たとえば、年間300万円の年金支給である場合、

・2000年:現役世代の負担、1人につき 83万円 ・2025年:現役世代の負担、1人につき 166万円 ・2055年:現役世代の負担、1人につき 250万円

出典:アゴラ http://agora-web.jp/

という具合になり、現役世代は働けど働けど、自分で使えるお金がなく、何の ために働いているか?と思ってしまい、年金を払うことはしなくなるでしょう。

したがって、今の年金制度は破綻せざるを得ないのです。具体的には、支給年 齢が65歳から70歳に繰り下がり、あるいは給付金額でいえば、65歳から月平均 25万円(今の平均的な夫婦2人世帯の場合)が、将来的には今の半分以下の月平 均12万円などになることが予測されています。これでは、年金があてにならな いことが分かりますし、年金を払わなくなってしまうのも仕方がありません。

2. 国家債務

2011年2月、日本は巨額の財政赤字によってスタンダード&プアーズの国債格 付が、AAからAA-に格下げられてしまいました。それから3年経っても、日本の 債務は増す一方で、1,000兆円を超えて1,200兆円に達しています。米国債の格 付も国家債務のため、2011年8月、最優良格付AAAからAA+に格下げとなり、国 家債務が国の格付けを決定する大きな要素になっています。

日本の債務額が多いのは、すでに多くの人が知っていることですが、債務を人 口で割った1人当たり債務では、2016年時点で日本は8万5,000ドルとなり、国 民1人当たり約850万円もの借金を日本政府は抱えている、ということになりま す。4人家族だと3,400万円ということです。

ただ、勘違いしてはいけないのは、1人当たり850万円もの政府の借金という のは、日本国民が日本政府に貸したものであり、日本政府は国債という紙を発行 して、国民から借金をしている、お金を国民から借りている、ということになり ます。そして、最悪、国債が返せなくなった場合、日本政府は国債を帳消しにし ようとしています。

日本の国債は、ゆうちょ銀行などを通じほとんどを日本国民が買っています。 そして日本の金融機関が買っています。つまり、日本国民や金融機関が日本政府

にお金を貸しているのです。そして金利等を国民に返しています。しかし、日本 政府が金利も払えない、国債の償還期限がきても償還できないという事態になっ た場合、誰が一番に損害を被るかというと、国債を買った国民と金融機関です。

借金を返すために借金をしている状態が今の日本政府。この状況が何年も続か ないということは誰にでも分かることで、仮にこの状態が企業であれば倒産しか 道がなく、個人だとしたら、誰もお金を貸さないという状況になることは容易に 想像がつきます。しかし、何故か、国民は「国がそんなことになるわけがない」 とタカをくくっています。

この状況は非常に危ないです。しかし、この状況を克服するのは至難の業で、 それができる可能性よりできない可能性のほうが高いことは誰が想像しても分か ることです。できない可能性、それが財政破綻です。

そうであれば、私たちとしては、財政破綻の煽りを受けない道を模索し、実行 していくしか自らを守る道はない、とするのが当然と言えます。

3. 東京オリンピック

2020年のオリンピックは、日本にとって救世主となりました。しかし、日本 国民にとって救世主にはならず、逆に日本政府が政府にとって都合のいい方向に 持っていくためのいい材料にされていく懸念が強く、そうなっていくのは間違い ないでしょう。

たとえば、増税。オリンピックで景気が回復基調に乗っていることは、日本人 としては歓迎しますが、一方、増税されては元も子もありません。しかし、日本 政府は景気が上向いていることを口実に増税を実行しました。そしてさらに、こ の流れは続いていき、最終的には欧米並みの消費税率15%とか20%に向かって いるのです。

オリンピックに向けて公共投資がはじまっています。要は無駄なお金をばらま き、施設やインフラの整備をしているのですが、それはアフターオリンピックに どのように活かされるのか、特に収支的な部分は検証しないまま、公共投資が行 われる危険性が大です。

すでに東京オリンピックの会場の中心地とされる江東区近辺を中心に地価が上 がりはじめていて、江東区からさほど遠くない銀座の土地に至っては、かつてバ ブル時代を彷彿させる1坪7,000万円台の数字もちらほら出始めてます。これは、 シンガポールバブルの煽りを受け、シンガポールに投資するより、伸びしろがあ る東京に焦点を定めた外資系不動産投資ファンドやマンションデベロッパーが活 発な投資をはじめたことによります。

このバブルはオリンピック開催の直前まで続くと見られますが、アフターオリ ンピックでは、土地の下落がはじまることは容易に想像がつきます。

4. 日本の政治外交

日本または日本人は外国、特に戦勝国から見てどのように映っているかという と、好き勝手させたら何をするか分からない、何を考えているか分からない不気 味な国。不気味、という意味は、戦後がむしゃらになって成長をとげ、世界第二 位の経済大国にのし上がり、ち密で精巧な日本製の部品は瞬く間に世界に広が り、世界中のあらゆる製品の部品として重宝されています。

日本のメーカーも頑張ってはいますが、日本人はどちらかというと、見えない 細かい部分、しかし商品の根幹を担う部分が得意とされ、製品より部品が得意と いう位置付がある一方、キヤノン、ニコン、SONY、KOMATSUに代表されるよ うに、メーカーととしてグローバルに展開している日本企業も多く存在します。

世界から見て日本は、本気を出すと怖い存在と映っているわけで、日本をどう にかなだめすかして、経済成長をさせて、アメリカであれば国債を買ってもらう

大得意という位置付けくらいにとどめておきたいところを、少し前の民主党政権 時代から「普通の国」、「アメリカと対等な国」になろうと画策していることがす べて裏目に出て、自民党安倍政権も、アメリカと対等に付き合う関係を築くべく 動いている最中、アメリカに「失望した」と言わせてしまう靖国参拝を安倍首相 がしてしまったり(靖国参拝については、賛成でも反対でもなく事実としてお伝 えしてます)、アメリカからの日本の信頼関係は薄くなっています。

一方、中国の台頭があり、アメリカとしては親日本、親中国のダブルスタン ダード戦略をとっていますが、アメリカからしてみると、どうも最近の日本はや り難いという印象を持っているようです。

政権が変わり過ぎてもいけませんが、政権が安定的になりつつある昨今の自民 党、もっと言えば安倍政権をアメリカは要注意政権と見ていて、これは政治リス クと言えます。

5. 為替

かつてソニーのCEOで取締議長を長年務めた出井伸之さんは、「為替の急激な 変動はやめてほしい」とニュースで度々言っていたことを思い出します。

製造業にとって、計画的な製造工程を経て製品化し、お店に並ぶのですが、そ こに時差が発生します。

製品を作るには、部品を購入し、製造ラインを確保し、製造し、価格を決め、 店頭に並べる準備をして、テレビコマーシャルを打ち、販売開始、という流れが あります。価格を決める時点と、製品が店頭に並ぶ時点でのドルと円の為替レー トが大きく上下していたのでは、最終的に問屋に卸す際の価格を為替レートで変 えるわけにはいかないので、製品プランと販売計画が立てにくくなり、企業の利 益が出るかどうかは為替が支配するといった歪な形になってしまいます。円高に なれば損をするし、円安になれば利益が出るという図式です。

本社が日本にある以上、最終的には円で決算をしなければいけないし、円で税

金も納めなければいけません。ドルではできません。

自動車業界で考えると、円高に伴う為替差損により、1円上昇するだけでトヨ タの場合300億円以上、ホンダで170億円、日産で150億円規模の営業利益が吹 き飛びますので、それが、「1日2円円高になった。次の日1円円安になった。1週 間振り返ると3円円高だった」なんてことがあれば、一体いくらで為替を設定し ておけばいいのかということになります。為替の不安定が続くと、いっそのこ と、アメリカで生産し、世界中に売るという動きが加速され、日本の税収は減る ことになってしまいます。

実際、トヨタ自動車は、福岡県宮若市の九州工場で生産していたトヨタ自動車 の高級車ブランド「レクサス」の工場を「為替の影響を減らす」という目的で北 米ケンタッキー州に移しました。360億円を投じて工場を作り、2015年夏から レクサスを生産し主に北米で販売されます。これは、トヨタ自動車豊田章男社長 が昨年自ら発表しました。

このように、円高の影響を懸念し、また急激な為替レートの変動リスクを勘案 し、企業が海外に生産拠点を移すことで、日本の空洞化がさらに進むことにな り、日本にとり税収が確保できなくなる。雇用が生まれなくなる。工場がなくな ると、工場の周りの地域の経済も回らなくなるといったマイナスの影響が出てきます。

6. 高齢化

香港やマレーシア、フィリピン、タイ等々、アジアの新興国に行ってみると、 直ぐに気づくのが、「歩いてる人、電車に乗ってる人が若い」ということです。 イメージでいうなれば、日本以外の国全体が「渋谷の若さ」。日本は「丸の内的 中年」というと分かりやすいかもしれません。

街に若い人があふれているのです。街全体に活気があり、エネルギーがありま す。しばらくアジアにいて日本に帰ってくると感じるのが、「時間が止まってい るように遅い」ということです。歩いている人は、40代、50代、60代が目立ち、

「日本はかなり古い国になってきたな」とつくづく思います。

下記は、「World Population Prospects, the 2010 Revision, United Nations」とい う国連が公表しているレポートですが、平均年齢が低い順から並べると、

1.ラオス 21.5 2.フィリピン 22.2 3.ブルネイ 28.9 4.マレーシア 26.0 5.カンボジア 26.8 6.インドネシア 27.8 7.べトナム 28.2 8.ミャンマー 28.2 9.タイ 34.2 10.シンガポール 37.6

ちなみに、中国、アメリカ、日本はというと、

中国 34.5 アメリカ 36.9 日本 44.7

このようにアジア各国は若者の集まり、日本は中年の集まりという状況になっ てしまったのが現状です。

こうなると、考え方も凝り固まってきます。国というのは、適正な進化し続け ないと衰退し、一度衰退すると浮上するのに、20年、30年とかかります。日本 もバブル崩壊し20年間沈み続け、まだ浮上したとは言えない状況が続いている のです。

したがって、考えを柔軟にして対応していくことが必要で、そういう意味では アメリカは上手く適正な進化を遂げています。それは、人口における年齢構成と いう観点から見ると明らかです。柔軟な移民政策をとり、スパニッシュやアジア から多くの移民をアメリカに受け入れています。アメリカに在住する4分の1弱、 約7,000万人は移民と言われています。その移民のなかには観光ビザでアメリカ に渡り、そのまま居座っている非移民もいますが、非移民がアメリカで子を産む と、その子はアメリカ国籍になります。

そうして、アメリカ人はうまく平均年齢を若く保っているのです。ただし、良 し悪しがあり、英語を話せないヒスパニック系の移民も多く、州として移民に対 する規制をかける州が増えてきました。

日本の出生率は、2011年時点で1.4で、アメリカは2.1です。人口の維持に必 要な出生率は2.1ですから、日本は今後人口が減ります。アメリカ人口はこのま ま変わらないペースでいき、フィリピン3.1、マレーシア、インドは2.6で人口が 増え、カンボジアが2.5、中国が一人っ子政策で1.6になっています。

ちなみに、出生率の上位はアフリカ勢が占め、1位はニジェール7.0、2位ソマ リア6.3、3位ザンビア6.3となっており、避妊をする習慣が根付いていないため たくさんの子が生まれますが、産業がないので経済が発展せず、医療が行き届い

合計特殊出生率ランキング 国別順位 出典:WHO世界保健機構 統計2012年度

ていないため平均寿命が短く、それはそれで問題になっています。

若い人がいなくなると、活気が出てきません。職場でも家庭でも街でもそうで すが、そうなると意識して自分を活気があるところに身を置き、チャレンジ精神 を持って生きていくことで、活力ある生活を作り出していくことが、自らの発展 にもつながります。

7. ストレス

日本は、かつて経験したことがないほどのストレス社会を迎えています。

特にうつ病の患者数は、過去10年間で3倍弱まで伸び、社会の歪み、家庭の歪 み等々、生活の歪みが原因でうつ病になる人が増えています。実は私もうつ病に なったことがあり、その時は自殺を考えたり、人のことがイヤになったり、仕事をする気になれなかったりととても大変な時期がありました。私の場合、そのう つ状態を海外に行き、気分転換をし、食事療法をして克服したのですが、深みに はまると生活すること自体が苦痛になるので、とてもやっかいです。

日本では間違いなく、ストレスが増えていきます。その時、何が頼りになるか というと、最後は自分です。自分が信じられるかどうか。そして、過度な幻想を 抱かないことです。本来人間は生きているだけで幸せなのです。それが、仕事仲 間、主婦仲間、友達同志、家庭でうまくいかなくなったとき、その原因は他人に はなく、すべて自分にあると考えることからはじめることです。同時に、自分を 責めたりしないことです。

他人と自分を比べたり、他人の悪口を言ったりしてはいけません。日本でもど この国でもそうですが、働こうと思ったら、どこでも働けます。その気になった ら、人間は何でもできます。贅沢を言ってこれは嫌だ、あれがいい、などと言っ ていると、どんどん運気が逃げて行きます。

余裕のある時はいいですが、どうしようもなくなったとき、人はどのように立 ち居ふるまうか、何をするかで、その人の価値は決まります。自分は何をするか です。人がどう見てるか、などは関係ありません。人に何かを望むのではなく、 自分は何ができるかを考えてください。そして、空気を吸っていることに幸せを

感じてください。そうすれば、道は開けてきます。

8. 生活習慣病

日本で餓死する人は、まずいなくなりました。生活が豊かになったのです。生 活が豊かになると、食事も豊かになり、街を歩けばそこら中にコンビニがあり、 歩くのがおっくうになるとタクシーがすぐに止まってくれて、電車や車で日本中 に行けるようになりました。

一昔前、糖尿病と言えば贅沢病でした。しかし、今、糖尿病は貧乏病と呼ばれ ています。コンビニ弁当、牛丼、ファーストフード。これらはカロリーが多く、 こういうものばかり食べていると糖尿病になってしまうのです。

日本人はそもそも美食家です。5,000万年前の縄文時代では様々な食を楽しん でいた形跡が遺跡に遺されています。山形県の押出遺跡では、肉をこねて中に栗 や松の実などをいれ、塩で味付けたハンバーグも出土したり、ドングリを原材料 としたクッキーの跡も確認しています。

縄文時代の人々と海の関係では、ハマグリ、シジミやアサリなどの貝を食した のはもちろん、サケ、マス、カツオやクロダイなどの数多くの魚を釣って食べ、 なかには外洋に出てマグロや鯨を獲ったいた人々もいたと言われています。ま た、縄文時代の人々はツキノワグマやヒグマまで狩猟していましたが、弥生時代 以降は、アイヌの人たちが住む地域など、一部地域を除いて見られなくなった現 象です。

また発掘調査の結果、縄文時代の人々は「お酒」も飲んでいたと推測されてい ます。このように、日本人のルーツがグルメであったためか、豊かになった日本 では、世界各国の様々なレストランができ、料理が出されています。ミシュラン の星の数では、本場フランス、パリを抜いて東京が世界一多くの星を獲得するほ どの美食家が日本人です。

確かに、アジアやヨーロッパ、アメリカに行って最初に感じるのは、食べ物が

日本ほど美味しくないということです。日本が美味しすぎる、日本人の口に合う 食事ではないということかもしれませんが、日本人はとにかく細かな部分にこだ わり、食材や料理を作る過程でもこだわるので、「日本の常識は、世界の非常識」 という部分は食事にも表れています。

話がそれましたが、日本人は美食家のため、美味しいものをいっぱい食べてし まいます。そして、日本食=粗食を食べる文化もだんだんと薄れてきて、朝は食 パン、ランチはコンビニの弁当、夜は居酒屋で飲みながらつまみ、ラーメンを食 べて帰るという生活が蔓延していますから、生活習慣病が増えるのは当り前で す。

そして、運動をあまりしなくなっているのも生活習慣病が増えている要因の一 つと言えます。家と駅をタクシーで通勤している人も多いと思います。タクシー を歩きに変えるだけでも生活習慣病リスクは減ります。

私は、50歳を過ぎていますが、お腹の筋肉を割ることを目指して毎日トレー ニングをしています。筋肉は、たとえ80歳になっても鍛えれば30歳代の筋肉を つけることができます。世界最年長でエベレスト登山に成功した三浦雄一郎さん も毎日筋力トレーニングをして、偉業を達成しました。筋力トレーニングをして いると、あまり余計なものを食べなくなりますし、ぜい肉が減ってきます。そう すると、身体の中に余計な脂肪がたまらず、結果、生活習慣病リスクの軽減につ ながります。

日本の自治体でも、メタボ発見のため、企業に対しお腹の周りを定期的に測 定し、メタボを減らす取組をしている自治体があります。腹回りが90cmを超え ると、心筋梗塞等の生活習慣病のリスクが一気に増えることを発見し、腹回り 90cm以下運動をしています。皆さんも思い当たる人は、90cm以下をキープす ることを目安にしてみてください。

9. テロ

日本にテロは関係ない。そう思われている方がほとんだと思います。しかし、 アルカイーダやタリバン等、テロというのは遠い存在と思っていると、そうでは ないことがすでに分かっています。

2002年には、アルカイーダの一部組織「ジェマ・イスラミア」幹部のフラ ンス人リオネル・デュモン容疑者がフランス当局が身柄を拘束された際、彼は 2002年7月から翌年9月まで日本に潜入していたことが判明していて、この間、 出入国を繰り返し、マレーシアなどにも出かける一方、日本国内では新潟の中古 車販売会社に勤めたりもしていました。

アメリカの中央情報局(CIA)や軍関連機関の対テロ部門で活動した経験を持 つフレッド・バートン氏は、日本のテロに関して下記のように話をしています。

「日本はアジアの他の諸国とくらべても、テロ防止のための有効措置をとって いる度合いが低いといえる。日本では当局がテロ容疑者の身柄や住居を一方的に 押さえ、捜査、捜索をするというテロ防止の具体的強制措置が人権擁護という観 点から許されない場合が多いからだ。さらにテロ防止では致命的な重要性を持つ 情報収集のための政府機関が単一には存在せず、情報収集の責任も能力もいくつ かの機関に分割されていることもある」

今後は憲法を改正して、集団的自衛権の行使が容易になる方向に向かっている ことを考えると、日本もテロの標的になることは想定しておいたほうが良いと思 います。

10. 教育

日本は島国で、他国から閉ざされた環境で生きています。もちろん、貿易もあ

り、多くの国々と接点を持ち、ビジネスなり、情報交換なりをしながら社会が成 り立っていますが、基本は島国です。そして、多くの日本人がいまだに英語を話 すこともできず、理解できないように、日本人同志でしかやりとりをしていませ ん。

経済が成長している時代は、日本国内だけでビジネスをしていれば、それなり の商売にはなったのですが、日本の経済成長が止まってしまうと、日本国内でビ ジネスをしていた企業の成長も止まってしまいます。そして、その会社や事業は 海外に出て市場を見つけてくるか、会社を縮小するか、事業を撤退するか、どち らかの選択を迫られる訳です。

つい最近も、そのような事例がありました。携帯端末メーカーです。1980年 代からNEC、パナソニック、シャープ、富士通、SONYは、こぞって日本市場向 けの携帯電話端末を製造してきました。1999年2月からスタートした携帯端末 でインターネットの接続を可能にし、携帯端末を使ったコンテンツ配信ビジネス モデルを作ったimodeの普及で、世界的にみても破竹の勢いで、高性能、高価格 の携帯端末が売れて行きました。

日本市場だけで高性能、高価格の端末が売れ、一方、海外では携帯電話でイン ターネットを閲覧する習慣が根付かず、携帯端末では話ができればいい程度の低 機能、低価格の携帯端末が普及していました。この市場はNOKIAが50%以上の シェアをとり、一人勝ち状態でした。

日本勢は日本市場だけしか相手にせず、NOKIAは低機能の携帯端末しか力を 入れていませんでした。ところが、状況を一変させたのはiPhoneの登場です。 iPhoneは最初からグローバル展開を視野に入れ、念入りに準備をしてきました。 最初から世界を視野に入れていたのです。世界中の若者が飛びつくデザイン、操 作性。この2点で世界中の若者を瞬く間に虜にしてしまいました。

そして、残された日本の携帯端末メーカーであるNECはカシオとの合弁NECカ シオモバイルコミュニケーションズという会社名で、携帯電話、並びにスマホ

も製造していましたが、iPhoneとサムスンに押され赤字が続き、2013年に遂に、 NECがスマホを含め携帯端末を製造することから完全に撤退してしまいました。 パナソニックもモバイル部門を分社化して携帯端末を作っていましたが、2013 年スマホの製造休止を発表しました。

一方、海外では携帯電話端末で独占状態でウキウキだったNOKIAは、スマホは 発売したものの、直近の決算発表でスマホの販売台数が落ち込み、携帯電話端 末、スマホ端末の両方の販売台数が減少し、携帯端末のハード部門をマイクロソ フトに売却する動きをはじめるまで、落ち込んでしまいました。

このように、現代は自国や今の状況で満足していたのでは、直ぐに時代遅れに なり、直ぐに衰退してしまいます。今の日本が衰退をたどる方向に向いており、 前述のiPhoneのようなダイナミックな動きを見せているのが、アジアの新興国と いう状況になっています。

つまりは、企業も人も同じ、法人も個人も同じということで、世界を見て、少 し先のことをして行かなければ、生き残れない時代になってきたということで す。要するに、日本人はとても優秀で頭が良く人材に恵まれています。日本国内 だけしか見ていないのは、もったいないのです。世界に目を向け、世界の人々と 情報交換し、ビジネスなり生活をすることで、視野が広がり、日本人の特徴を活 かし、世界に向けて展開できる商品やサービスを作れると思います。

日本では、そういう教育が足りないのです。臨場感がないからでしょう。今の ままでいいやと思えば、今のまま何不自由なく生活できてしまうから。居心地が いいともいえます。しかし、居心地がいいところに長年いると、変化に対応でき なくなってしまいます。先の携帯電話端末メーカーのように、そのうちなくなっ てしまいます。これからは、変化に対応できる教育が必要になります。

英語力も必要ですが、クリエイティブ力はもっと大事になってきます。金太郎 飴教育を受けてきた日本人はなるべく個性が出ないようにという教育をしていま す。そもそも、それがダメなのです。個性を大事にし、独創性を尊ぶ教育こそ が、これからの日本を支える人材が育つ教育だと思います。

11. 日本の競争力の低下

スイスのシンクタンク、経営開発国際研究所(IMD:International Institute for

出典:IMD:International Institute for Management Development

Management Development)が公表した2013年世界競争力年鑑によると、国際 競争力の1位はアメリカ、2位はスイス、3位は香港で、日本の順位は前年の27 位から24位に上昇しました(次ページ表参照)。

若干は上昇したものの、世界第三位の経済大国としては、競争力の総合評価で は24位という不本意な結果になってしまった原因は何でしょうか。

理由はいくつもありますが、

・英語が話せない ・規制が厳しい(日本人でないと○○ができない等々 ) ・基本的に排他的(よそもの=外国人を寄せ付けない風土) ・創造力よりも記憶力を優先させる教育 ・税金が高い(アメリカ人は属人主義なのであまり関係ありませんが)

といった感じで、とにかく外国人には住みにくい国。という部分が24位に表 れていると思います。

3 もっと怖いのは自然災害のリスク

日本がいかに弱ってきているかは、分かっていただけたと思います。

しかしさらに怖いのは日本が抱えている自然災害のリスクです。あとで紹介し ますが、日本は複合的な自然災害のリスクが世界で8番目に高い国とされていま す。

私たちの住んでいる日本は、自然災害のリスクだらけなのです。PTという生 き方を選んだほうが良い理由、自然災害リスクについても把握しておきましょ う。

1. 地震

日本地震学会前会長で京都大学大学院地震学研究室教授の平原和朗氏は、「日 本に安心して住める場所はない」 と断言しています。

世界の地震の約1割が、地球の陸地の約0.25%しかない小さな日本で起こって いるのです。そして世界で起こるマグニチュード6以上の地震の2割が日本で起 こっています。

損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は、家庭向け地震保険の保険料を 全国平均で15.5%引き上げることを、2013年3月26日に金融庁に正式に届け出 ました。東日本大震災を踏まえ巨大地震発生のリスクが高まったと判断したため で、政府と損保各社は2014年7月にも値上げをする発表もされています。

値上げにあわせ、都道府県ごとに4段階に分かれていた保険料区分を3段階に 変更し、たとえば、東京都内の非木造建物の年間保険料は保険金1,000万円あた り、1万6,900円から2万200円に引き上げられる状況にあり、地震リスクととも に、家計を直撃する値上げもひそかに進行しているのが現実です。あなたはこの ような地震リスクの非常に高い日本で家やマンションを持ち続けようようと思い ますか?

以下の図は、世界の震源分布とプレートとマグニチュード5以上で、震源の深 さが100kmより浅い地震を赤い点で表したものです。日本の地図がまったく見 えないくらい、日本は地震で埋め尽くされています。同時に、プレートの黒い境 界線に沿って地震が起きていることも確認できると思います。海外に移住する際

出展:世界の震源分布とプレート 防災白書より http://j-jis.com/data/plate.shtml

の参考にしてください。

2. 津波

地震リスクが高い日本は、同時に津波リスクも高い国と言えます。 このこと は、先の東日本大震災の被害が、地震による揺れに伴う倒壊や火災の被害者よ り、津波による被害者のほうが多かったことからも、皆さんは「津波って怖い な」という記憶が残っていると思います。

地震の震源地は、陸地でも起こりますが、地震はプレートと密接に関係して いるので、日本の被害を考えた場合、ほとんどの地震が海の溝を震源としてい ます。よくニュースで、「只今の地震の震源地は千葉県沖南東20kmで、深さ 10km」というような報道を何度か耳にしたことがあると思います。

たとえば、太平洋プレートは、日本近海の太平洋側の溝の中に1年間8cmずつ 沈み、歪を生んでいます(下記1図)が、その沈んで力を蓄えたプレート(下記 2図)が何かの拍子で、元に戻ろうとバネのようにプレートを跳ね返します(下 記3図)。その跳ね返した力が地震となり、海水を押し上げ津波へと変貌するの が、地震と津波発生の仕組みです。

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プレート境界と地震発生地点とは、ほぼ同じようなエリアになります。日本の 海域を含め、プレートの位置と地震発生位置を見比べると、日本列島全域が地震 区域になっていることがよく分かります。

出典:泉南市ホームページ http://www.city.sennan.osaka. jp/kikikanri/bousai/faq.htm

出典:文科省パンフレット

次の図は、日本近海のプレートと地震の震源地をプロットした図ですが、プ レート境界と震源地が並行しているのが、よく分かります。

政府の地震調査委員会は、2014年1月1日現在の活断層や海溝型地震の長期評 価を発表しました。注目の南海トラフ沿いでは、30年以内にマグニチュード8 ~ 9級の地震が発生する確率が70%程度へと前年の確率よりわずかに上昇しま した。

南海トラフ巨大地震で発生する津波について、2012年3月の内閣府の発表によ ると、南海トラフの巨大地震をマグニチュード9と想定すると、震度7が想定さ れる地域は10県、153市町村であるようです。そしてそのときには、関東から 四国、九州の太平洋沿岸などの広範囲で大きな津波が予想されています。

地震や津波により、道路や鉄道、港、空港は止まってしまいます。そしてライ フラインが途絶え、生死の境をさまようことになります。首都圏や海沿いの住宅 密集地だけでなく、海抜が低い地域や河川沿いなど、さらには土砂災害が想定さ れる山間部であっても、日本では地震や津波の被災リスクは高いのです。

3. 火山

日本には、全国で活火山が110あり、世界の活火山(1580)の7%を占めてい ます。 一方、世界の総陸地に対する日本国土の割合は約0.25%なので、活火山 の比率が極端に高いことが分かります。そして、活火山と地震の関連性は強く、 地震が起こると活火山が活発になり、火山が活発になると地震も起こりやすくな ります。

活火山▲は次の図を見ていただくと一目瞭然ですが、日本近海の海溝と並行に 並んでいます。 図の中の点は震源を示し、色は震源の深さを表しています。こ

出典:気象庁

の図を見ると、活火山と震源は、見事に連動していることが分かります。日本 は、地震大国でもあり、活火山大国なのです。

4. 地震大国の原発リスク

2011年3月11日の東日本大震災と津波によって、福島で原発事故が起こりま した。電源が止まってしまったため、炉心の冷却ができなくなり燃料がメルトダ ウンし、原子炉の格納容器を損傷するメルトスルーや、圧力容器を守るためのベ ントによって、大量の放射性物質が原子炉外へと放出されました。

これまで電力会社は、地震、津波が来ても原子炉に影響はないという絶対的な 安全性を主張し、政府は電力会社の言いなりになり、安全性をないがしろにして いたことが、今回の大惨事につながってしまいました。

私たちは電力会社と電力会社の主張を容認する政府に洗脳され、結果大惨事と なった。こういう事実を見ると、このパターンは原発以外にもあるのではないか と疑うのは当り前のことです。政府や大企業、自治体の言うことを素直に聞いて いた私たち庶民、市民が最も悲惨な目にあっています。

私たちが心しておくべきことは、政府も大企業も信じられない故、正しい情報 を身につけ、自らを守る術をつけておく。そのようなことを、今回の東日本大震 災は教えてくれたのではないかと思っています。

世界を驚愕させた天災、人災である東日本大震災と原発事故が起きて3年が経 過し、日本は悲惨な過去を忘れたかのように、またリスクのある道を進みはじめ ました。

2011年3月時点で、世界中で原発は439基動いていて、そのうちの12%に当 たる54基が日本で動いていました。今の日本は原発による発電がなくても人々 は生活し、産業は成長しています。しかし、日本は同じ過ちを繰り返す道を選ん

でいるのです。これは、良いとか悪いとか、原発賛成、原発反対ということでは なく、事実として日本は原発に頼るリスクのある道を選んだのです。

今までの自然災害のリスクをまとめると、

1日本は世界有数の地震大国 2日本は世界有数の津波大国 3日本は世界有数の活火山大国 4日本は世界有数の原発大国

日本の陸地は地球全体のわずか0.25%です。その0.25%の場所で、世界で発 生するマグニチュード6以上の地震の2割が起こっています。そして世界の原発 の12%が日本に集中しているのです。

上記を見ると、1~3はどうにもできない日本固有のリスクなので仕方ありま せんが、最後の4が何故この状況の中で存在するのか、してしまったのか。考え させられるところが多いですが、事実は事実として受け止めて、私たち個々人が 今後どう動いていくか、どうリスクヘッジして生きていくかが、とても大切に なってきます。

そして、これだけの原発が日本にあることは、核施設を標的としたテロ攻撃 や、他国からの攻撃による原発の破壊リスクも、高まっています。今回の事故が 全世界に報道されることによって、原発の脆弱さを同時に世界に知らせることに なってしまったのです。

5. 台風

2011年の台風12号は、死者・行方不明者が106人となり、99人の犠牲者を出 した2004年の台風23号を上回る平成最悪の台風となりました。昭和34年の伊勢 湾台風は、犠牲者5,098人・負傷者38,921人(「消防白書」平成20年度版)にの

出 典:Joint Typhoon Warning Center and the U.S. National Oceanographic and Atmospheric Administration.

上図は、1945年~ 2006年まで世界で発生した台風の通り道を示しています。 34

ぼり、さらに経済的被害は甚大で、明治以来最大の被害を出し、台風の怖さを見 せつけました。

犠牲者が3,000人以上の台風には、伊勢湾台風(昭和34年)、室戸台風(昭和9 年:犠牲者3036人)、枕崎台風(昭和20年:犠牲者数3756人)があり、これらは 昭和の三大台風に挙げられています。伊勢湾台風での犠牲者数は、1995年1月 17日に兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が発生するまで、第二次世界大戦後 の自然災害で最多のものであり、全国に及んだ経済的被害を見ると、GDP比被 害額は阪神・淡路大震災の数倍で、東日本大震災との比較対象に達するものなの です。

台風はある程度予想ができ、台風が来るまでの時間で心構えができるので、突 然やってくる災害にような緊急的な危険性は低くなります。しかし、突風や豪雨 を伴う台風で毎年何十人、最悪の場合数千人という規模の犠牲者が出ていること も頭の中に入れておく必要があり、台風に備えた普段からの取組では、用心して もし過ぎることはないです。

出典:国土交通省土地・水資源

部 「日本の水資源」平成22年度

版より

台風の強さを色で示していまして、日本の沖縄あたりは、強さがMAXになって いる台風が世界で一番通過しているエリアというのがよく分かると思います。日 本は台風大国というのは、この図を見ると一目瞭然です。

6. 洪水

日本は、台風大国ということは前項で理解できたと思います。そして、台風 の関係もありますが、日本の降水量は、世界で4番目に多いのです(下記図を参 照)。

日本の国土の70%が山地なので、必然的に河川の勾配が急になり、河川の氾 濫が起こりやすく、山地では土砂災害が起こりやすくなっています。このような 地形の上に、世界でも大きな台風が目白押しにやってくる日本は、水害大国とも 言えます。

7. 土砂災害

日本の国土の特徴として、水災が起こりやすい地形ということも理解できたと 思います。水害が多ければ、それに関連し土砂災害も起こりやすいということ は、容易に想像がつきます。

「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」などです。日本の70%は山地で、さらに国 土の中央を山脈が縦断しています。そのため勾配が急な河川が多く、集中豪雨や 台風による土砂災害が起こりやすい地形と構造になってしまっているのは前述の 通りです。特に火山性の堆積物が多い地域は、地すべりが多いことで知られてい ます。本州の日本海側から東北地方、北海道東部などの豪雪地帯では、雪どけ時 期にも地すべりが多発します。日本では2012年に入ってから、3月に新潟、長 野で大規模な地滑りが起こっています。

出典:国土交通省国土技術政策

総合研究所 「勾配が急な日本の河川」

8. 自然災害の複合

世界銀行は「自然災害危険地域-世界リスク分析」と題したレポートの中で、

出典:世界銀行「自然災害危 険地域-世界リスク分析」

「3種類以上の自然災害による死亡リスクの高い国」として、地震、台風、洪水、 土砂災害、火山噴火、干ばつの6種類の自然災害の中で、3種類以上の災害に遭 い、かつ死亡のリスクの高い国をリスクにさらされる人口の割合順に発表してい ます。

順位 国名 人口割合 リスク面積

この数字を見てみると、日本はリスクにさらされる面積は全国土の23.2%に すぎませんが、リスク人数では人口の69.4%と高くなっています。これは、日 本は国土の70%が山で、人が住める場所が限られていることで、都市圏と人口 が密集している地域での地震、台風、洪水の死亡リスクが高いためであると考え られます。

4 しかし日本は素晴らしい

これまで見てきたように、さまざまな観点から日本のリスクは高まっていま す。しかし、この日本は、素晴らしいところも非常に多いということも分かって いただきたいと思います。

日本のパスポートは世界で最強と言われています。なぜならば、世界は、日本 を認めているからです。日本は戦後ひた向きなまで努力をし続け、経済成長を遂 げました。戦争をしない国、そして経済という武器を持ち、瞬く間に世界第2位 に上りつめた国、ということのようです。

日本は世界中にODAという形で、お金をばらまいています。よく日本に外国の 大統領や首相だという要人が訪ねてきます。何しに日本に来ているかと言うと先 進国以外の要人は、ODAをもらいに来ているのです。

日本は気前がいい。下記の図は、日本のODA予算の推移を示しています。一時 は年間1兆円以上を世界各国にばらまいていました。驚くべきことに、対中国の

出展:外務省「わが国のODA 予算の現状」

ODAは、今まで3兆円以上にも及び、中国が世界第2位になっても、今なをも対 中国ODAは続いているのです。

そういう意味で、日本は気前のいい国で、世界各国からは「いい国」という 目で見られています。確かに、礼儀も正しいし、綺麗好きで、間違っても鮨屋で エビの尻尾を床に捨てたりはしないし、電車で大声で話をしたり、周りに迷惑に なるようなことは控える人種です。

上場企業のアウンコンサルティングは2012年、「アジア10カ国の親日度調査」 の結果を発表しました。調査対象国は、韓国、中国、台湾、香港、タイ、マレー シア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピンで、アジアの10 ヵ 国での調査から、

・日本人については、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリ ピンの5カ国では80%以上が日本人を「大好き」「好き」と回答

・ベトナム、フィリピンの2 ヵ国では90%以上が「大好き」「好き」 ・一方、韓国、中国の2 ヵ国では「大好き」「好き」が50%を下回る

出典:アウンコンサルティング

ということがわかっています。

また日本へ旅行に行きたいかと質問したところ、韓国、中国を除く8カ国では 80%以上が「とても行きたい」「行きたい」と答えており、このうち、タイ、マ レーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンの5カ国では「とても行きたい」

「行きたい」が90%を超えました。 このように、日本人のことを嫌いな国はあまりなく、日本人のポテンシャルは

アジアの中でとても高いことが実証されています。

第 2 部 PT という生き方

1 PT(パーマネントトラベラー)を利用する

1. 何のためにPTになるのか

ここまで、日本を取り巻くリスクについて見てきました。この章では、いよい よ本題となる終身旅行者「PT」について見ていくことにします。

PTとはパーマネントトラベラーの略で、「永遠の旅行者」という意味があるの ですが、今やPTとは「旅行」という概念を超え、「現代の社会の成り立ちに合っ た生活スタイル」ということができます。そして、このPTという方法は、日本 をはじめとする世界で定められた制度に基づき行うもので、後ろめたいことは何 一つなく、逆にグローバル社会でグローバルなライフスタイルをとる、非常に刺 激的で、それでいてメリットも多い制度であることを頭の中に入れておいてくだ さい。

ボーダーレス社会によってあらゆるシーンで境界線がなくなってきた現代にお いて、日本のさまざまなリスクを回避するため、海外を利用することのメリット は非常に大きくなってきました。海外の複数の国々を目的別に使い分け、生活上 のさまざまなリスクを回避するPTの生活スタイルは今後ますます認知され、グ ローバル社会で生きる私たちにとり、より身近なものになってくるでしょう。

PTは、国の法律に基づいた制度を利用しながら、複数の国々を移動し、自由 を勝ち取る生活スタイルです。また最近ではオリンピック出場の目的や、子ども の教育のため、さらにリタイア後の老後の生活を有意義に過ごすためにPTを実 行する人々も増えてきています。

PTについては、節税、タックスフリーを目的とする生活スタイルと捉えられ ることも多いようです。実際に、メリットとしてそういう面が大きいことも否め ません。そして、そういう指南書も多く出ています。

しかし、ここで明記しておきますが、脱税は犯罪ですし、法を逸脱した行為は

もちろん違法です。ここでは脱法行為を勧めるものではありません。

結果的に、税金が安い国の制度を合法的に適用できれば、税金は安くなりま す。移動を続けることで、どの国の税制にも適用除外となれれば、税金を払うこ とはなくなります。

ただし、節税だけを目的にPTになるのは、かえってデメリットが大きいとも 言えます。たとえば、20年も30年も日本で暮らしてきて、日本のシステムを享 受しながら生活してきた人が、節税だけを目的にPTになっても、かえって失う ものが大きすぎます。後々触れますが、日本国籍を捨て、1年の半分以上を海外 で過ごし、日本国内に家も持たず、また、日本の会社の代表取締役や役員の地位 も捨てなければなりません。

世界の国々を渡り歩くというイメージから、根無し草のようにも思われるかも しれませんが、グローバル化する世界の中で、地球全体が住処だと思える方には むしろ自然な生き方かもしれません。

PTの目的は、人によってさまざまあると思いますが、最大の目的は、より自 由に、より豊かに人生を謳歌することです。そのために、日本だけでなく、世界 の国々のさまざまな制度を上手に利用しようというものです。

デメリットを考慮しても、得がたい自由がPTにはあります。そう信じられる 方にはとても魅力的な生き方でしょう。

ここではまず目的別にPTの生活スタイルの例を見ていくことにしましょう。

2. 事業のためのPT

今、世界はボーダーレス化しており、すべての境がなくなってきました。国の 境、人々の境、言葉の境、そして、ビジネスの境もなくなってきているのが現状です。

たとえば、コンビニエンスストアでは、コンサートチケット発券や銀行機能ま で網羅し、商品を販売する店舗から、生活サービス全般を提供する身近なサービ スステーションという位置付で、次々と新しい試みをしています。

日本国内で「境」が次々となくなっている状況は、すでに世界でも起きてい て、企業の事業展開が国境を越えて世界規模に広がり、国籍が意味をなさないほ ど活動の場が国際的に広がっています。

このボーダーレス化が進む背景には、インターネットなどの情報技術や輸送手 段の発達、企業による海外現地生産の推進などにより、国境による制約が緩く なってきたことがあり、グローバルな事業展開を行っている多国籍企業は、世界 規模での企業統合や各国間での連結維持および強化などを通して、国際的な競争 優位を築いています。このグローバル化、ボーダーレス化はビジネスで生き残る ために必然の動きと言えます。

日本のボーダーレス企業の代表格「ユニクロ」の世界展開を進めるファースト リテイリングは、店長候補として採用した全世界の正社員と役員の賃金体系の統 一を打ち出しました。社員の評価基準を国内、海外で同一にするとともに、成果 が同じなら賃金も同水準となります。役員などで実施していた形態を、一部の店 長にまで広げていくようです。

グローバル経済の加速により、今ではさまざまな業種でボーダーレス化が進ん でいます。仕事内容が同じであれば、経営側の論理として当然ながら賃金の安い 人材を採用し、「単純労働」や「マックジョブ」と言われる領域では、当たり前 のように海外の人が働いています。すでに東京のコンビニでは中国人、韓国人の 店員ばかりです。

昔は国や地域で著しく所得が異なっていましたが、最近では新興国に富裕層、 中間層が生まれ、先進国の富裕層、中間層との差が縮まってきました。「ユニクロ」の世界同一賃金導入は、そうした経済のボーダーレス化を象徴するものだと 言えます。

3. 老後のリタイアメントのために

アジア各国は、世界の富裕者層に目を付け、富裕者を自国に呼び込む戦略をと りはじめました。特に、シンガポール、日本、アメリカ等のシニア層を呼び込む 動きが活発化していて、アジア各国では、ルールに沿った手続きをすれば、その 国に住むことができる制度(=リタイアメントビザ)をとっています。

主なリタイアメントビザ実施国は次の通りです。

・アジア:マレーシア、フィリピン、タイ、台湾 ・ヨーロッパ:イギリス、オーストリア、スイス、スペイン、ブルガリア、

ポルトガル ・中南米:グアテマラ、コスタリカ、ブラジル、メキシコ ・オセアニア、太平洋圏:オーストラリア、フィジー、北マリアナ連邦

アジアの国がどういう政策をとっているか見てみましょう。

3-1 マレーシア

マレーシアは、ロングステイビザという制度があり、一定の条件さえ整えば、 マレーシアに10年間住めるロングステイビザを発給しています。

○マイ・セカンドホーム・プログラム(MM2H)/マイセカンドホーム査証

査証有効期間は、パスポートの有効期間内にて最長10年間(サラワク州は5 年)。更新可能。査証発給料500リンギット。加えて出入国自由のソシアルビジッ トパスの発給(1年当たり90リンギット)が必要。永住権の取得不可。管轄移民局はクアラルンプールの入国管理局本部。サバ州とサラワク州は各州移民局の管 轄となります。

◆30万リンギット(約1000万円)以上の現地定期預金 ◆50歳以上の専門職に限り週20時間内の就労可。ただし雇用主による特別

労働許可申請が必要です。 ◆定期預金は申請後、仮承認が下りてから移民局の承認書と旅券を持参して

口座開設。また預金は2年経過後に住居購入・教育・医療目的に限り、50

歳以上/ 5万リンギット、50歳未満/ 15万リンギットの引き出しが可能。 ◆50万リンギット以上の家の購入が可能。ただし、規定金額は州によって

異なります。 ◆配偶者と21歳未満の子ども、60歳以上の介護が必要な両親などの同行可

能。 ◆家族単位で1台のみ無税にて車の持ち込み可能、ただし複雑な手続きが必

要。またはマレーシア生産車1台に限り、消費税不要にて購入可。 ◆IDカードが発行され、公式の身分証明書としても使用できます。 ◆査証更新は申請書・旅券・預金証明・医療保険証明などを提出。所要約2週

間。

<申請方法> ◆個人申請

2007年6月より認可代理店を通じての申請となっていましたが、2009年1月 より再び個人申請が可能とりました。マイセカンドホームセンター(MM2H) にて申請手続きを行います。 ◆認可代理店:認可代理店は142社

<必要書類> ・Social Visit Pass申請書2通 ・パスポートコピー(全ページ・カラーコピー)、写真2枚 ・志望レター(英文・A4用紙に10行程度~) ・過去10年間の職務経歴書

・結婚証明書(配偶者同伴の場合) ・出生証明書(18歳未満の子ども同伴の場合) ・マレーシアの銀行の定期預金証明(リンギット預金のみ) ・マレーシアの民間医療保険加入証明 ・マレーシアの病院の健康診断書

・不労月収証明

<申請審査手順> 申請書類を提出すると、移民局から承認書が発行。その後、現地にて定期預金

開設、保険加入、健康診断を終え、証明書類と承認書を移民局に提出すると正式 な査証が発給されます。

申請から査証発給まで約10週間。

3-2 フィリピン

○特別永住権 (正式名称:SRRV、通称:PRA査証)

◆35歳以上の外国人に対してリタイアメント用の特別永住権を発給する優 遇制度。

◆2011年5月より新制度開始。旧タイプと新タイプの併用が行われ、新タイ プの預託金は一律2万ドル(要介護者などは一律1万ドル)となり資金条 件などが大幅に緩和されました。

◆現地で就職する場合の労働許可取得手続きが緩和。許可を得ない就労は不 可。

◆外国人名義での土地購入は認められていません。

○ロングステイ査証.SRVV

2003年9月より実施された新しいロングステイ用の査証制度。預金の必要無し で、1年間の滞在が許可されます。現地延長不可。

3-3 タイ

○リタイアメント査証

リタイアメントビザ(Oビザ)、またはロングステイビザ(O-Aビザ)は、退職 者向けのビザとしてタイ国が発給しています。発給条件としては、

・50歳以上 ・80万バーツ(約250万円)以上の預金(または相当する年金)がある

となっています。

ビザの有効期限は1年で、有効期限が切れても、その時点で80万バーツ以上の 預金があればさらに1年の更新が可能です。退職者向けビザなので、働くことは 許されていません。リタイアメントビザとロングステイビザは似ていますが、日 本で取得できるものがロングステイビザで、タイで取得できるものがリタイアメ ントビザと名前が違い、取得条件も違います。

■リタイアメントビザ取得方法

日本でロングステイビザを取得しようとすると、非常に大変です。大使館の HPに書いてありますが、預金証明書、無犯罪証明書、健康診断書が必要で、無 犯罪証明書は公証人役場での証明が必要です。一方、タイで取得できるリタイア メントビザは手続きが非常に簡素です。

その場合に必要になるのは、タイの銀行に80万バーツ以上預金してある残高 証明書。これだけです。問題は、どうやってタイの銀行口座を作るかという点 に絞られます。これは、タイに滞在して3 ヶ月以上経過していれば口座が作れま す。

■タイで銀行口座を作る

タイの銀行に口座を作る時に必要なのは、住所、携帯電話の番号、最初に入金 するお金、台帳およびカードの実費(300バーツ)です。住所については、ホテ

ルだと疑われるかもしれません。携帯電話も必須です。銀行はどこでもロンダリ ング疑惑を考えており、タイのような発展途上国は狙いやすいので日本以上に警 戒しています。口座ができたら、後は80万バーツ以上を口座に入金するだけで す。

ちなみに、チェンマイには日本語が分かる店員がいる銀行があるので、口座を 作る時のやりとりは通訳なしでもできます。

■リタイアメントビザ取得

銀行に預金ができて送金が済めば、あとは残高証明書を取って申請料を払うだ けでリタイアメントビザの取得が可能です。このとき、80万バーツ以上の預金 をして3 ヶ月以内だと、最初に3 ヶ月の暫定ビザが発給され、3 ヶ月後に再び残 高を確認してから残り9 ヶ月の正式なビザが発給されます。

80万バーツ以上の預金をして3 ヶ月以上経過していると、1年間のビザが発給 されます。銀行に行って「リタイアメントビザに必要だから残高証明書を作って 欲しい」と言うと、数百バーツの手数料で作ってもらえます。残高証明書の有効 期限は1週間なので、1週間以内にイミグレーションでビザ手続きをしなければ なりません。

タイには、「エリートカード」という変わったビザがあります。結構、使える ビザなので、少し説明します。

■タイランドエリートカードとは、

世界で初のタイへの外国人専用の会員制エリートクラブのことです。ロングス テイをはじめ、観光旅行レジャー、飲食、健康管理へのサポートにも特権が与え られ、タイ暮らしを満喫できる会員カードです。タクシン首相がタイの観光産業 拡大をめざし誕生した贅沢な無料サービスが生涯利用でき、さらに観光査証がつ いています。

会員になるための条件は、

・タイ国以外の国籍所有者 ・経済的に問題がないこと ・過去にいかなる犯罪歴もないこと ・年齢制限なし

入会費は200万バーツ(約630万円)。会員権はいつでも他人名義に書き換え 可能ですが、30%の書き換え料が必要。タイランドエリートカードには、さま ざまな特典があります。

●入国査証の特典 5年間有効の観光査証を取得できます。この査証は5年後に自動的に更新す るのでそのままタイに居住が可能。ただし連続して90日以上タイに滞在す る場合は、当該査証は保証されますが、入国管理局に毎回1,900バーツ(約 6,000円)を払うことにより、査証滞在期間を延長できます。

●空港での特典 エリート関係者が出迎え、空港内を電気自動車でVIPラウンジへ移動、その 間係員が入国手続き、スーツケースの受取、税関まで代行します。その後は 滞在先のホテル、または自宅までリムジンにて送ります(空港により送迎範 囲はご確認ください)。

●ゴルフ・スパそして健康管理の特典 タイ国内の20 ヵ所以上の高級ゴルフ場での18ホールまでのグリーンフィー が無料。タイ国内40 ヵ所のスパでの伝統的タイ風マッサージが毎日1 ヵ所 1時間半までは無料。毎年1回無料で、10 ヵ所以上の国際病院にて身体検査 を受けることができます。その他、タイ航空のVIPラウンジが随時利用可能

(他の航空会社利用でも可能)。さらに特別価格で人気のレストランやエン ターテイメントを楽しめます。2011年時点で、会員数は2,568名、うち日 本人会員は399名です。

出典:CRED EM-DAT 2011

4. 自然災害回避のために

国連大学の報告書では、自然災害の受けやすさを2つに分けて考えています。 下記の上の図は、単純に自然災害に遭いやすい国かどうか(被災可能性)を、毎 年の地震や洪水などが襲われる可能性のある人数の総人口比で表しています。

次に、同じ自然災害に襲われても死者数が多い国もあれば少ない国もあり、自 然災害のダメージを受けやすいかどうか(自然災害リスク)は下の図で表されて

出典:CRED EM-DAT 2011

います。自然災害リスクは、被災可能性の指標に災害に対する脆弱性の指標を 掛け合わせて計算されていて、元になった国際的自然災害データベース(出典: CRED EM-DAT 2011)がどの程度までの災害をカウントしているかについては、 以下を参照。その他に温暖化のよる海面上昇の影響も災害の1つとしており、過 去の実績に将来の推計が足し合わされている点にも注意が必要です。

出典:国連大学, World Risk Report 2011

なお、海面上昇を除く自然災害では、地震、嵐、洪水、干ばつの4災害を取り 上げていますが、これら4災害で被災死亡者数の88%と大部分を占めています。

日本は、自然災害リスクが最も高い国の一つとされていますが、被害者数とし ては最も多いレベルから一段下のレベルになっています。防波堤や地震対策、水 害対策等の防災対策が進んでいることを受けてのことと推測しますが、一つ言え ることは、日本は自然災害の総合商社的な位置づけで、地震、津波、火山、台 風、洪水の発生率が、世界で最も高い地理的場所であるということは、肝に銘じ て覚えておきたいと思います。

これらの図を見ると、日本を離れ、海外に住む場合、海外で仕事をする場合、 どこの国に行けば自然災害リスクから回避できるかが分かりますので、参考してください。

5. 節税のために

所得がある程度あると、日本の税金はとても高いです。日本の所得税の最高税 率は40%。その他に住民税があり、50%を超えます。その他消費税、固定資産 税、自動車税があったりするので稼いだお金の半分以上を税金として収めること になります。

実際は累進課税なので所得全部に対して40%ではないのですが、いずれにし ても高所得な人にとって、常々日本に住むのは結構税金がかかると思っている状 態なのは否めず、そんな高い税金を逃れて香港やシンガポールなどのタックスヘ イブンに移住したいと考えている方が増えています。

次ページの表は、ECA International Co., Ltd. というイギリスに本社がある調査 会社がまとめた、2011年、2012年、2013年の各国の所得税の推移をまとめた もので、緑色のマーカーは、所得税率が下がった年、赤のマーカーは所得税が上 がった年です。

節税ということと、日本から近いことを考えて、たとえば香港を例にとると、 香港の最高税率は17%ととても安いです。香港では、日本のようにその他の税 金が山盛りということもなく、外国人が負担するのは固定資産税と一部の酒税

(アルコール度数が高いモノだけ。ビールは無税だから超安い)、それからスー パーのビニール袋税くらいでしょうか。

収入額が同じ場合、50%の税金と17%の税金を比較したら手元に残るお金が 全然違うため、香港に移住したいと考える人が多いのもうなずけます。

香港は中国と違って先進国ですし、言葉の問題を除けば生活自体は関東近郊で 暮らすのと大差ありません。日本人の場合、香港へはビザなしで90日まで滞在

が可能で、その間に1度でも中国・マカオを含む海外に出れば、また延長が受け られるので、時々遊びに行けば長期にわたって香港に滞在することは可能です。

ただ、実際の香港暮らしではIDカードがないとあらゆることが不便ですし、観 光ビザでの長期滞在時に香港で何らかの収入を得た場合は不法就労となるリスク もあります。このため、本格的に香港へ移住するのであればやはりビザは必要で

あると考えるべきです。 節税目的で香港に移住する場合、考えられるのは以下の2つのビザとなります。

・会社オーナーとして取得する投資ビザ(就労ビザ) ・1,000万香港ドル以上を香港へ投資すると取れる投資移民ビザ

◇会社オーナーとして取得する投資ビザ

これは何らかの事業を香港で行って香港経済に貢献することを前提として発行 されるものです。先にきちんとした事業ありきで申請すべきもので、香港に移住 したいからとりあえず会社を作ってビザを申請するというのは意味合いが違いま す。

最近聞くところによれば、香港政府の規制がだいぶ厳しくなっているようで、 事業の実現性や申請理由の合理性などが厳しく審査され、ビザが取れないという 事例が30%程度発生しているという話も聞きます。

どれだけ魅力的な事業計画を提示できるかに掛かっていると言っても過言では ないので、作文にはセンスが必要です。これには、良いサポートを選ぶことが大 事です。

◇投資移民ビザ

資産家向けの方法として、香港政府が指定する投資商品に対して1,000万香港 ドル(1億3千万円くらい)以上を投資することによって取得できる投資移民ビ ザがあります。名前が似ているので間違えやすいですが、こちらは純粋にお金で ビザを取得することが可能です。

このビザは、上記の就業ビザと違って、事業活動による香港への貢献を必要と しないため、お金さえあれば毎日ぶらぶらと暮らすことができるということで す。しかも、香港は投資による利益には税金がかからないため、投資の利益と配 当で暮らす場合は「まさに無税」となります。

投資ビザの条件は下記です。

・満18歳以上であること ・申請日から過去2年間に渡って1,000万香港ドル以上持っていたことを証

明する英文の書類 ・外国籍(日本国籍でOK)

このビザは、お金で買うビザです。ただし投資対象となる商品は香港政府に よって限定されているので、ただお金を持ってくればいいというわけではありま せん。

6. 子どもの教育のために

ここ最近にわかに注目を集め始めているトレンド、「教育移住」について考え たいと思います。

教育移住とは、「子どもに海外で教育を受けさせるために移住をする」ことを いいます。国際的な視野を身につけ国境を越えて活躍できるような子になって欲 しいという願いを持つ親が増えてきていることと同時に、終身雇用制の崩壊と就 職難、東日本大震災による原発事故と希望の見えない不透明な日本に我が子の未 来を託してもいいのかという不安もあるようです。しかし、日本の教育環境下で は世界で通用する力をつけるのは難しいのが現状です。

グローバルな子どもに育てるために必要なことは、まず英語の習得です。

子どもの場合、言語習得は大人と比べて比較的容易です。英語を身につけさせ たいだけであれば、小学校での英語授業に加え、英会話スクールに通わせる、自 宅での学習、海外旅行へ行き生の英語に触れさせるなど、英語に積極的に触れら れる環境を作ることで上達させていくことができます。

しかし日本では、学んだ英語をアウトプットできる環境がほとんどありませ

ん。吸収する環境は整えられても、子どもの英語レベルが確認できる場は限られ てしまいます。

そうなると英語を身につけさせたい場合、学ぶことと話すことを一度に行える 場としてインターナショナルスクールに通わせることを考えるでしょう。です が、日本国内にあるインターナショナルスクールは各種学校という扱いになるた め、日本の義務教育を受けたことになりません。

それなら、いっそのこと日本を出て異文化の中で育ててみるのもいいかもしれ ない、という選択肢が生まれてくるのは自然な流れなのかもしれません。

現地のインターナショナルスクールに通うことで得られることは、まず、英語 の習得。日本人学校ではなくインターナショナルスクールに通うのですから、コ ミュニケーションはもちろん英語です。また、さまざまな国の生徒と接すること で英語以外の言語との関わりが生まれます。

多言語と関わりを持つということは、異文化や多くの価値観と出会うことにな ります。十人十色という言葉があるように、国によって習慣も文化も違うので、 旅行しただけでは分からない、実際に暮らしてみることでしか分からないことに たくさん出会います。その中で学び、暮らし、経験を積むことで、「日本的価値 観」でなく、広い視野を持った子どもに育てることができます。

また、国際的な人脈を広げることもできます。臆さず自分の意見を言える子ど もにもなるでしょう。子どもの可能性は未知数です。思わぬところから芽が出て くる可能性もあります。その芽を出すためのベースを作ってあげたいと考えたと き、教育移住を視野に入れることも選択肢としてありなのかもしれません。

バイリンガル、国際的な視野、広い価値観の獲得という言葉には、閉塞感を抱 えた日本において子育てをする親には魅力的かもしれません。

しかし、メリットにばかり目を向けるのではなく、子どもを海外で育てること で生じるデメリットもしっかりと認識する必要があります。

6-1 教育移住の5つのメリット

1.国際視野が広くなる

日本にしか住んだことがないと、日本を客観視することはなかなかできませ ん。移住することで、現地の生活が日常になります。そうしてはじめて、日本な らではの良さ、残念さを感じ取れるようになります。子ども時代を海外で過ごし た人には、ある共通点があります。日本に縛られない広い視野を持っていること です。

2.各国に友人ができる

インターナショナルスクールにはさまざまな国の子どもが通っています。いく つもの島を所有している富裕層、王族や貴族など、日本では接点がないような家 庭の子女と机を並べて勉強することになることも。欧米の上流階級の家庭では、 将来のビジネスに生かすための人脈を得るためにインターナショナルスクールに 通わせています。また、親の転勤に伴う学習環境を提供するというのがインター ナショナルスクールの設立目的なため、出入りが多く、1年で3分の1の生徒が入 れ替わることも珍しくありません。それだけ多くの国の多くの人と友達になれる 機会があるとも言えます。

3.得意なことを伸ばせる

たとえば日本では100点取れた理科のテストについてもっと深く勉強すること よりも、50点しか取れなかった社会のテストを見直して、できないところをで きるようにすることが推奨されがちです。日本の教育では、苦手分野を克服する 指導が中心となっています。欧米では得意な分野を見つけ、そこを伸ばすように 支援することを重視します。学習内容の飲み込みが早い生徒は「飛び級」がある のは有名です。習熟度合いをはかるテストもありますが、そのための勉強をする というのは日本のやり方。インターナショナルスクールでは、テストのための特

別な勉強を奨励されません。伸び伸びと自分の得意分野に打ち込めます。

4.うまく自己主張ができるように訓練される

協調性が重視される日本では、自己主張が疎んじられる傾向がありますが、欧 米式教育は逆の考えです。他人との違いを認め、うまく主張することができるよ うに、幼稚園(プリスクール・キンダーガーテン)から徹底的にトレーニングさ れます。将来、ビジネスシーンでは特に必要な、「自分の考えを伝える力」が備 わります。

5.帰国枠で日本の学校を受験できる

帰国のタイミングが受験に合えば、一般受験よりも有利な帰国枠で受験が可能 です。帰国枠受験を採用する学校は限られますが、インターナショナルスクール 生は英語面接と英語エッセイで受けられるところが多く、競争率が一般入試より も有利です。帰国のタイミングが入試に合わないときは、インターナショナルス クール生用の編入試験を行ってくれる学校もあります。

その他、現地ならではの文化や風習、宗教を肌で感じられることで、価値観を 広げられる機会も多いです。ただし、日本人が日本を出て外国で暮らすとなる と、大きなリスクも覚悟する必要があります。

次に教育移住のデメリットを見てみましょう。

6-2 教育移住の5つのデメリット

1.日本人の価値観とのギャップが大きくなる

日本人の子どもが欧米式の教育を受けると、日本の教育を受けてきた親とは価 値観のギャップが大きい人間に育ちます。我が子なのに考え方が違いすぎること

を嘆く親も少なくありません。また、子どもはやがて、日本語よりも英語のコ ミュニケーションのほうがラクになるので、日本語でのコミュニケーションを億 劫がるようになります。

2.日本の学習内容に疎くなる

海外のインターナショナルスクールでは、日本地図から福島県、福井県、福岡 県のおおよその場所を指し示すことができないようなレベルの教育しか受けられ ません。日本の小学生でも知っている歴史上の有名人物や日本各地の有名な特産 品などもほとんど知りません。「日本は小さい頃に行ったきりで、たまにテレビ に出てきたときに観るくらいでよく知らない」と言うインターナショナルスクー ル生も少なくありません。また、算数・数学はたいてい日本のほうが1 ~ 2年進 んでいます。計算も計算機の使用が認められているところが多く、計算の反復練 習を推奨する日本の教育方法との違いがあります。インターナショナルスクール を卒業する前に帰国した場合、日本の学習進度に追いつくのは無理が生じます。

3.日本語が苦手になる

バイリンガルは、母国語の言語能力があってこそ、真価を発揮します。母国語 の習得がおぼつかないと、第二外国語の習得も伸び悩みます。また、日本語より も英語が得意になり、日本人としてのアイデンティティに悩むケースもありま す。英語が流暢になっても、英語圏のネイティブには及びません。人種差別にあ い、劣等感を抱く可能性もあるということを知っておいたほうがいいでしょう。 欧米社会だけでなく日本の社会にも居場所がないような感覚になるという声も上 がっています。

4.部活でひとつのスポーツに専念できない

インターナショナルスクールのスポーツ活動では1年を3シーズンに分け、シー ズンごとに別のスポーツをする「シーズンスポーツ」となっています。練習も、 日本の部活のように朝連から始まり、暗くなるまでとことん練習することはあり

ません。1週間のうち2 ~ 3日、2時間程度で終了。先輩との厳しい上下関係もな く、比較的穏やかな雰囲気の中で練習が行われます。野球やサッカー、バスケや バレーボールが好きで、夢中で打ち込みたいという子どもにはっきりいってもの 足りません。逆にスポーツは楽しめればそれでいい、という子どもにはぴったり です。

5.高額な学費

インターナショナルスクールは日本の私立にあたり、学費が高額です。欧米に 比べて割安、治安も良いということで最近特に注目されているマレーシアへの教 育移住は、比較的割安とはいえ、年間百数十万円ほど。また、イギリス、キャサ リン妃の母校であるマルボロカレッジのマレーシア分校が、2012年秋に開校し 話題になっていますが、こちらの年間学費は小学校約150万円、中学校200万円 です。

海外で学ぶ日本の子どもの数は年々増加し、特にアジアは2002年では約1万 5,000人だった小中学生の数が、2011年までの10年で6万5,000人(外務省「海 外在留法人人数調査」より)、実に4倍以上になっています。教育移住が選択肢 のひとつとなる時代になりつつあります。

2 PT の原理の概要「5 つのフラッグ理論」

1. 複数の国を使い分ける

企業家で作家のW・G・ヒル氏は、自ら数ヵ国を移動することを実践し、1989 年に 「PT」、1992年に「PT2」と題する決定的な本を出版しました。この中でヒ ル氏は、ハリー・D・シュルツ氏の「3つのフラッグ」に、所得を得る国や余暇を 過ごす国を加えて、PTの「5つのフラッグ理論」を確立しました。

この「5つのフラッグ理論」のように複数の国を使い分けるPTには、さまざま なメリットがあると考えられます。

1国家の崩壊リスクから逃れられる 2自然災害や人的災害から逃れられる可能性が高まる 3課税リスクから逃れられる 4複数の国々を活用することで、物事を広くとらえる幅の広い人間になれる

これらのようなメリットを受けるPT、とても魅力的だと思いませんか。

2. 「5つのフラッグ理論」

PTの概念の中で最も大切なのは、目的別に複数の国を使い分けることにあり ます。前述のようにPTの概念を確立したヒル氏が完成させた「5つのフラッグ理 論」は、非常に重要な概念です。少し詳しく見ていくことにしましょう。

「5つのフラッグ」をまとめると以下のようになります。 ●5つのフラッグ

第1のフラッグ:国籍を持つ国

第2のフラッグ:ビジネスをする国 第3のフラッグ:居宅(居住権・永住権・市民権)を持つ国 第4のフラッグ:資産運用を行う国 第5のフラッグ:余暇を過ごす国

3. 第1のフラッグ「国籍を持つ国」

これはパスポートを持つ国ということです。日本人は一般的に、「日本国」と なります。しかし、二重国籍を許可する国では、2 ヵ国の国籍またはそれ以上の 国の国籍を保有する人々もいます。複数の国の国籍を原則認める国は以下のとお りです。

●複数国の国籍を容認する国

アンティグア・バーブーダ、豪州、バルバドス、ベリーズ、ベナン、ブラジ ル、ブルガリア、ブルキナファソ、カナダ、カーボベルデ、中央アフリカ、 コロンビア、コスタリカ、コートジボワール、キプロス、ドミニカ国、エル サルバドル、フランス、グレナダ、ホンジュラス、ハンガリー、アイルラン ド、インド、イスラエル、イタリア、ジャマイカ、ヨルダン、レバノン、ル クセンブルク、メキシコ、モルディヴ、マルタ、モーリシャス、モロッコ、 オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、パラグアイ、ペルー、ポーラ ンド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セントクリストファー・ネヴィス、 セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、 スロバキア、 南アフリ カ、 スペイン、スイス、スウェーデン、シリア、トーゴ、トリニダード・ト バゴ、チュニジア、ツバル、英国、米国

日本人の場合は、二重国籍が認められていませんので、このようなパスポート の使い分けはできません。

出典:World Bank and International Finance Corporation (IFC) Doing Business 2012

4. 第2のフラッグ「ビジネスをする国」

このフラッグは所得を得る国です。十分な資産を保有し、リタイアしている人 であれば、このフラッグは必要ありません。しかしそのような人たちでも、何も しないとすぐ飽きてしまいます。社会とのつながりを持ち続けるためにも、ビジ ネスを続けていくことになるでしょう。

所得を得る国ですから、人口増加が見られ、経済や市場が拡大し、所得も上昇 する活気があり、かつ自然災害が少ない国が好ましいです。そして、事業にかか る税金が低い国であればなお良いでしょう。

また、ビジネスがやりやすい国はどこかという観点では、世界銀行傘下の国際 金融公社(IFC)が2011年10月に発表した2012年版 「DoingBusiness2012」の

「ビジネスがやりやすい国ランキング」が参考になります。

この報告書では、起業、建設許可、電力アクセス、不動産登記、融資アクセス、投資家保護、税金支払い、国境を越えた貿易、契約の実効性、清算手続きの 10項目について、各国の優位性をみて、最後に総合的にビジネスがやりやすい ランクづけをしています。

この中では日本は20位となっており、アジアのシンガポール、 香港、タイ、 マレーシアよりも下位にいます。

次の図は、イギリスに本社を置くECA International Co.,Ltd.が調査しまとめて いる「世界の国々の会社員の年収」について、分かり易くまとめています。中間 管理職を対象にした調査になります。

出典:ECA International Co.,Ltd.

一番給料がいい国はスイスで、平均年収で税引後1,000万円を超えています。 日本は2位で、3位はオーストラリア、4位ルクセンブルクと続きます。ここにも、

9位香港、10位シンガポールが入ってきており、何か商売をするにしても、給料 が低い国で商売をするより、給料が高い国で商売をした方が、成功する確率が高 くなるので、そういう観点で参考になります。

5. 第3のフラッグ「居宅(居住権・永住権・市民権)を持つ国」

このフラッグは実際に居住する国になります。この場合、国籍と同じ国に居自 を構えるという発想になりかねませんが、そうなるとPTの意味はなくなってし まうので、第1のフラッグと第3のフラッグは必ず別の国にしておかなければな りません。

居宅を持ち、比較的長く滞在することを考えると、治安が良く、自然災害や人 的災害の少ない国や地域がいいでしょう。その点では、前で見てきた、さまざま な面で危険な国や地域は、極力避けたほうが賢明です。

また物価や環境、 教育などの点でも安定している国がいいでしょう。さらに個 人や法人の税率が低い国がいいです。

6. 第4のフラッグ「資産運用を行う国」

このフラッグは金融資産を中心として自分の財産を運用、保全する国です。一 般的に、金融資産の運用を行う場合には、税金が軽減されるオフショアセンター が有利であると言われています。

オフショアセンターとは、いったい何でしょうか? それは下記の6つの特徴 を持った国、または地域のことです。

1何らかの軽課税環境が政府により設けられていること。所得税率20%以 下の国

2法規制並びに行政による規制が最小限にされていること 3 顧客の秘密を厳守すること 4資産保護のための法規制があること 5信頼性の高い金融システムが存在すること 6信頼性の高いインフラ基盤(特に通信システム)が整備されていること

上記、6つの特徴の中で、特に重要な要素が1~3です。このような特徴を持 つ地域、国が世界各地に約40 ヵ所存在します。代表的地域、国としては、ヨー ロッパ地域ではスイス、モナコ、リヒテンシュタイン、マン島他があり、英領 バージン諸島に代表されるカリブ海域、香港、シンガポール等のアジア地域にも あります。これらオフショアセンターと呼ばれる地域では、上記のようなその地 域特性を上手に利用するために、数兆円の市場規模を持つ世界の大企業や主要金 融機関がオフィスを構え、世界の50%強の資産が集まっていると推測されてい ます。

なぜ、これだけの資産がオフショア地域に集まるかを6つの特徴別に検証して みます。

軽課税措置が取られているため、個人や企業がその節税対策を目的に、資産を オフショア地域に避難させているのは容易に想像がつきます。

法規制並びに行政による経済活動に対する制限措置が最小限のため、自由な経 済活動が推進されていて、これに伴い、活発な投資活動等が行われ易い環境にあ ります。

金融機関の政府への報告義務がなく、また法律により、顧客の情報を漏らすこ とが禁じられており、顧客の利益が守られています。

法律問題、債権者などから資産の一部を保護することができます。信託、国際 ビジネス法人設立、銀行口座開設等の手法により、この目的を達成することがで きます。

オフショアセンターでは、低額資金で銀行設立の許可を出しています。この事 由と軽減された課税措置があるので、大企業は事業拡大の一貫としてオフショア 銀行を開設し、貸付、社債の発行等の資金調達を独自に行うこともできるように なっています。

また、オフショアセンターを通して、国際市場に対する投資活動を行うと、そ の利益に対しての課税がない、またはほとんどないに等しいので、高いパフォー マンスを追求することが可能となります。

高い機能を持つ通信インフラの整備は、特に金融システムをサポートする手段 として欠かせないもので、オフショアにある銀行に資金を預け、運用し資産形成 をおこないつつ、必要資金の移動を行うことが可能です。

この他にもオフショアセンターでは、個人会社設立または、持ち株会社を設立 することにより、企業所得並びに個人所得の課税軽減を図ることも可能となりま す。

この際、特に重要なことはその地域の会社法において、下記のことが規定され ていることです。

・責任の有限性 ・法的書類が少ない ・資本金が少なくて良い ・役員会、株主総会は世界中のどこで行われても良い ・会計監査の義務は皆無または監査がオプションと規定されている ・社名の選択は限りなくあり、社名が十分有限責任を表している

上記のような会社法が制定されている法域において会社を設立する場合には、 それぞれの地域における専門家の適格な助言を受けることが必要となります。

出典:New Economics Foundation

第5のフラッグ「余暇を過ごす国」

このフラッグは、自分の趣味や噌好を実現する国です。これに関しては英国の シンクタンクNew Economics Foundationが発表した、地球幸福度指数の国別ラ ンキングを参考にしてみましょう。

地球幸福度指数(HPI) 黄色や緑色部分がスコアのいい国

この地球幸福度指数とは、これまでの国の豊かさを金銭的度合いで比較する GDPなどの経済指標とは違い、真の人間生活の豊かさを表すために、人間活動 が将来にわたって持続可能かどうかの国の幸福度を測る指数です。以下の3つの 基準を A×B/C という計算式ではじき出した指数になっています。生活の満 足度が高く、なおかつ国民が長生きし、さらに地球環境に負荷をかけていない国 を判断していることになります。

A 生活に対する満足度 B 平均寿命 C 環境への負荷

これを151カ国を対象に調査した結果は、

1位 コスタリカ 2位 ベトナム 3位 コロンビア

となっています。

先進国と呼ばれる国でのトップは41位のイギリスで、日本は45位、アメリカ が105位となっています。日本は平均寿命が長く、生活満足度もそれなりに高い ですが、環境負荷が高いことから上位にはなっていません。

日本以外の国それぞれの数値を見ても最終的に地球環境への環境負荷が低いと ころが上位に来ていて、地球幸福度指数というよりは環境負荷指数のようなとい う感じですが、「余暇を過ごす」という意味では、参考になります。

ランキングの結果では、私たちが一般的に「豊かである」と考える国とは大き く異なっています。トップ10 ヵ国のうち9 ヵ国が中南米です。

先進国においては経済成長と所得再配分のどちらが優先されるべきかという議 論の中で幸福と所得は関係ないと主張されています。次ページの相関図からは所 得水準の割に幸せ度の高い国として、東南アジア諸国のほか、ニュージーラン ド、スウェーデンなどをあげることができます。逆に、所得水準の割に幸福度が 低い国としては、ロシア、スロベニア、ドイツ、香港などです。日本は平均的な 位置のややドイツ寄りといったところです。

同じアジアでも、東南アジア諸国とは対照的に、日本、韓国、香港、台湾など

東アジア儒教圏では、所得の割に幸福度が低い点が共通しています。これには、 儒教国特有の要因として、男の社会的責任が強調され過ぎて男性の幸福度が女性 と比較して低いという側面や「文」の尊重からマイナス面を強調するマスコミの 儒学的報道の影響で実際の状況よりも幸福感を感じにくいという側面などが働い ていると思われます。

出 典:World Values Survey HP, World Bank, World Development Indicators(とも に2011年1月2日)

台湾の所得水準はIMF, World Economic Database, October 2013による

3 タックススヘイブンの活用

1. タックスヘイブンの活用

PTを考えていると、よく出てくる言葉に「タックスヘイブン」というものが あります。これは、税金が無税か、またはとても低い国および地域を指していま す。前述の日本のタックスヘイブン対策税制では税率が20%以下の国、地域と されています。

このタックスヘイブンでは、税制上の優遇がある以外に、一般的には以下のよ うな特徴があります。

・為替管理がなく資金移動に制限がない ・英米法に基づき銀行や信託の仕組みが整備されている ・オフショアカンパニーの設立が容易にできる

つまり税制、金融面での柔軟性、優位性がある地域と言えます。このため世界 中から投資資金がこのタックスヘイブンに集まっているのです。

2. タックスヘイブンの種類

タックスヘイブン(tax haven)は、日本語では「租税回避地」といいます。 ヘイブン(haven)は「避難所」という意味で、タックスヘブン(tax heaven) =「税金天国」ではありません。タックスヘイブンと呼ばれる国や地域は、税金 が極端に安いか、場合によっては免除されます。そのため、会社をそうした国へ 移したり、子会社を作って子会社の利益を増やしたりすると、本国で収める税金 を減らすことが可能となります。

これはタックスヘイブンと呼ばれる国や地域にもメリットがあることで、タッ

クスヘイブンの国や地域は、もともと面積が狭くて目立った産業がありません。 そのため、海に面している国の場合、その国が貿易の起点になれば、いろいろな 国の船が定期的に訪れて取引を行い、船員がお金を使ってくれます。

内陸部では、金融の拠点となることで世界の通貨が動いて、それが産業になり ます。つまり、税金を安くしてでも人や船やお金が集まって動くようにすること が、その国を発展させることにつながるのです。最初からそのような政策を打ち 出している地域もあれば、結果的にそうなっている地域もあります。日本に近い ところでは、香港やシンガポールが実質的なタックスヘイブンになっています。 アメリカに近いところでは、ヴァージン諸島やドミニカ共和国、パナマなどがあ ります。ヨーロッパでは、モナコ、サンマリノ、リヒテンシュタインなどがタッ クスヘイブンにあたります。

タックスヘイブンは税金が無税かまたはとても低い国、もしくは地域ですが、 その制度的内容によって大きく以下の3つに分類されます。

1完全無税タックスヘイブン 2国外源泉無税タックスヘイブン 3低税率タックスヘイブン

1の完全無税タックスヘイブンは、主として所得税、法人税、譲渡税、相続・ 贈与税が無税のタックスヘイブンです。しかし、付加価値税、会社登記税、輸入 税などは課税されます。

2の国外源泉無税タックスヘイブンは、国内源泉所得には通常の税率で課税さ れますが、国外の所得に対しては課税がされないタックスヘイブンです。

3の低税率タックスヘイブンは、通常の先進国と同様に全世界所得に対して課 税されますが、一部の税金が無税であるとか、租税条約でメリットがあるタック スヘイブンです。

PT ライフを始めよう!

第 3 部 PT ライフをはじめよう!

1 PT になるために

リスクヘッジのための「5つのフラッグ理論」と言われても、すぐにビジネス や居宅のフラッグを日本以外に変更できないというのが大方の状況かと思いま す。そこでここでは、将来PTになることを前提に、段階を踏んだ過程を考えて みることにします。

1. 優先順位

前述した5つのフラッグの国々で、まず消去法で解決するフラッグは、第1の フラッグ、国籍を持つ国でしょう。日本の国籍を捨てて、他の国の国籍を取ると なると、その時点で一気にハードルが高くなります。

仮に、日本国籍を放棄して、他国の国籍を取得する場合には、事前に十分にそ の対象国を検討しなければなりません。国によって滞在要件や所得、資産状況な ど市民権取得の必要条件は異なってきますので、詳しい事前調査と入念な準備が 必要になります。

したがって、残りの4つのフラッグから解決策が見つけやすいフラッグについ て考えていくと、比較的スムーズに答えが見つかります。

たとえば、余暇を過ごす国。この国を見つけるのは、そう難しくはありませ ん。今までの人から聞いた情報、テレビで見た情報、自分で調べた情報等々、余 暇=旅行先という感覚で、見つけやすいフラッグと言えます。

ただし、今まで知らないで国でも、世界には素晴らしい自然、素晴らしい体験 ができる国、地域がたくさんあります。自分の理想に近い国や地域がどこなの か、詳細をネットや本で下調べをしておいてください。

次に考えるのは、住むところです。PTなのになぜ住むところが必要なのかと

思うかもしれません。これは、1年を4分割すると3 ヵ月×4回に分けることがで きます。3 ヵ月ごとに行く国を変えるという方法もありますが、毎年毎年だと、 なかなか落ち着かず、精神的な安らぎが得られにくくなります。そうなると、余 計なストレスが溜まり、身体を壊すことになりかねません。これでは本末転倒で すね。そこで、適度に休める地域(国)を定めておくと気が楽になります。

余暇は積極的に楽しむ。住む国は安らぎながら生活するというスタンスをとる ことで、1年を通じ、生活のメリハリがつき、リズミカルにPTライフを無理なく 進める土壌がつくれます。

住む国ということは、賃貸契約もしくは不動産を購入するという選択肢なの で、いずれにしても慎重に検討していきましょう。不動産を購入すると同時に、 永住権がついてくる国もあるので、その国がタックスヘイブンの国であれば、 PTライフは一気に楽しくなります。

そしてその次はビジネスをする国、儲ける国です。これは、ネットを使ったビ ジネスである程度稼げていると、ネット環境さえ今の状況とさほど変わらなけれ ば、PTライフの「仕事をする国」と「余暇を過ごす国」または、「仕事をする国」 と「住む国」を一緒にしてしまってもいいでしょう。

ただし1年の半分以上、その国から海外に出なければ、その国の税法が適用さ れるケースが多いので、あくまでも定期的に移動しながら生活するということを 前提にすることをお勧めします。

そして、最後に、「運用をする国」を選ぶ順番がいいと思います。ここで重要 なのは、自分の資産(流動資産)は、いくらあり、いくら投資できるか、という 明確な数字を把握することです。なんとなくでは、なんとなくの結果しかでませ ん。

これらは、根を詰めて考えるより、人生を楽しむためのPTライフという位置 づけで、リラックスしながら、世界をフィールドに何をしていくか、ワクワクし ながら想像してみてください。

2. PTになるために考えておくべきこと

ある程度、フラッグの優先順位が分かっていただけたでしょうか。では具体的 にPTの実践に向けて考えておくべきことを見ていきましょう。

2-1 金融資産を一部海外に移す

まずは金融資産を一部海外に移すこと。これは比較的簡単に行うことができま す。

資産運用を行う国を決める必要も出てきますが、一旦ある国に口座を作って資 金を移し、その後で都合が悪くなったとしても、資金を他の国に移動することは 簡単にできます。そのため、フラッグの決定で致命的になることはありません。 また海外銀行口座自体を複数の国に持つことも有効ですので、まずは海外銀行の 口座に資金を移動することが第一歩です。

これは、PTを実行しない場合でも、日本に万が一のことが起こったときのリ スクヘッジになりますので、すぐにでも行っておいてください。

2-2 海外銀行口座の開設

実際に海外の銀行口座を開設する国は、日本からも近いアジア・太平洋地域の 国々がいいでしょう。香港やシンガポール、タイなどが挙げられます。これらの 海外の銀行口座の開設は、一部郵送で口座開設ができる場合もありますが、それ らの国々の状況を自分の目で確かめるためにも、実際に現地に自ら行って口座開 設をするのが賢明です。

基本的には、まず資金を保管する銀行口座を作ります。たとえば、HSBC香港 77

の銀行口座を開設する場合の、郵送と、実際に香港に行き口座開設した場合の違 いを見てみましょう。

HSBC香港に郵送で口座開設した場合にできることは、普通口座の開設のみで、 各種通貨での普通預金と定期預金だけです。

では、現地で口座開設した場合にはどうなるのでしょうか。普通口座だけ口座 開設して帰ってきてしまうと郵送のケースと変わらないのですが、HSBC香港は 普通口座にオプションとして投資口座がついています。したがって、香港へ行っ た際は、「投資口座も開設したい」ときちんと伝えて投資講座も開設します。昔 は投資口座も郵送で開設できたのですが、SFCという日本の金融庁に当たるとこ ろからの指導で開設できなくなりました。

では、投資口座を開設するとどうなるか。

・H株(香港上場株)とアメリカ株に投資できるようになる ・世界有数の700種類以上のファンド(投資信託)を買うことができる ・金を買うことができる(ただし、金の現物ではなく金の保有証券を買うこ

とになる) ・各種保険を買うことができる

HSBC香港では金といってもペーパーの金なので、実際には金の現物を恒成銀 行で買っている人が多いです。また、日本人には保険商品は売ってくれません。 このことから、郵送での口座開設と香港現地での口座開設の違いは、「株が買え る」ことと「ファンドが買える」ことに集約されるため、別途証券会社の口座を 開いてしまえば、郵送での口座開設でも投資口座と同等の海外投資が可能となり ます。

ではなぜ多くの人が香港へ行ってHSBC香港に口座を作っているかというと、 「クレジットカード」を作るためです。HSBC香港発行のクレジットカードを作っ て日本を含む世界中で使うという手法が、海外投資をよく知る人の中では当たり

前に行われています。 しかしながら、こちらも規制が厳しくなり、口座開設後のすぐの申し込みでは

クレジットカードを作ることができなくなりつつあります。もし、クレジット カードを希望される方は、口座開設後、しばらくの実績をつけてから香港でクレ ジットカードの申請ということになります。

ここで、まとめておきましょう。 ・HSBC香港の郵送での口座開設でできること

⇒普通口座 ・HSBC香港の現地での口座開設でできること

⇒普通口座+投資口座+クレジットカードの申し込み となります。

2-3 日本の非居住者になるために

金融資産を海外に移したあとに、いよいよ人間も海外に移る準備をすることに なります。第3のフラッグの居宅を持つ国や第2のフラッグのビジネスをする国 を検討する準備期間と考えてもよいでしょう。この間に、世界のさまざまな国々 を調査し、訪問し、自分にとって相性の良い国を探すことになります。

ここで考えることは、自分に合った国を探すことで。第3のフラッグの居宅を 持つ国は、5つの国の中でも最も滞在が長くなる可能性がある国となります。そ のため、毎日の生活を考え、気候や食事、言語、生活習慣、宗教、住宅事情、物 価、税制などを検討しなければなりません。

3. 子どもの教育は?

PTでは、独身で彼女もなく扶養家族もいないという状況であれば、身軽に行 動ができるので、PT実現度が高くなります。しかし結婚して奥さん、旦那さん、 子どもがいるとなると、結構大変です。その代わり、結構なメリットもありま す。

世界はグローバル化し、ボーダレス化し、様々な境がなくなってきました。た とえば、東京にいても、ニューヨークにいても、バンコクにいても、香港でも上 海でもクアラルンプールにいてもパリにいても、若者が集まる場所にはユニクロ があり、H&Mがあり、Forever21があり、GAPがあり、ファッションの境がなく

なってきています。人種の境もなくなってきており、一昔前はニューヨークは人 るつぼ

種の坩堝と言われていましたが、今は先にあげた都市は、どこも人種の坩堝と化 しています。

世界を移動するのにも、運賃差もなくなってきました。電車で移動するのと変 わらない運賃で、飛行機で7時間も移動できてしまいます。東京―名古屋間の新 幹線の運賃で、成田からクアラルンプールに行けてしまう時代になり、人々の移 動の境もなくなってきました。

その結果、家族で大移動できる時代になったのです。そこで、子育てという面 から、海外で子どもを育てるのは、良いことか悪いことか? その大変さはどう かなど、メリット、デメリット等に焦点をあて、お伝えしたいと思います。

海外にいる子どもの教育について考えられるのは大きく考えて以下の3つの方 法があると思われます。

1日本人の教育方針に基づいた教育をさせる → 海外の日本人学校に入れ る。

2国際人として育てる→ (1)インターナショナルスクールに入れる。 → (2)現地のローカルスクールに入れる。

1の日本人学校は原則、海外に住む日本人の子弟を対象に、日本国内の小・中 学校課程と同等の教育を行う全日制の教育機関で、文部科学省が認定している学 校です。

2011年4月現在で、 アジアに35校、 オセアニア3校、中近東8校、欧州21校、 アフリカ3校、北米4校、中南米14校と世界51 ヵ国に合計88校あります。これ らの日本人学校の入学資格や授業料に関して、一例としてここでは香港日本人学 校を取り上げてみます。

香港日本人学校の入学資格は、香港の居留権を有し(あるいは居留に必要なビ ザを取得見込みで)、香港に居住し、学齢に達しており、日本語による教育に支 障がない者となっています。ただし、国籍は問わないとされています。

授業料などは、入学金が4,000香港ドル(5万2,000円程)で、授業料、施設 費、クラス費、PTA会費の月額の合計納付金は、小学部の香港校が2,633香港ド ル(約3万5,000円)、中学部が2,828香港ドル(約3万7,000円)です。通学バス を利用する場合には月額で小学部の香港校は830香港ドル(約1万1,000円)、中 学部は700香港ドル(約9,000円)がかかります。

4. どういう国を選べば良いか?

国選びは、段階を踏んでPTに慣れていく訓練を普段からしておく必要があり、 具体的なイメージを持っておくことが実現に向け大変重要になってきます。

ここではイメージしやすいように、具体的な国名を挙げシミュレーション例を 紹介します。もちろん、語学レベルや趣味、嗜好、体力、資産額、職務経験、家 族の問題など、一人ひとり状況が大きく異なってきますが、ひとまずシミュレー ションということで、参考にしてください。

■第1のフラッグ:国籍を持つ国 → 日本

日本国籍を持つことのメリットは非常に大きいので、日本国籍を持つ ことを最大限上手に利用することが大事です。

■第2のフラッグ:ビジネスを営む国 → 香港、シンガポール、日 本 比較的親日であり、多くの日本人も滞在しビジネスをしています。ま た、消費意欲があり、ネット環境が充実し、経済が伸びています。日本 国内を源泉とする収益が発生した場合は、非居住者でも、日本に対し源 泉税20%の納税義務が発生します。

■第3のフラッグ:居宅を持つ国 → マレーシア、豪州等災害また は原発の少ない地域 マレーシアは、環境が整備されている割には物価が安く、日本の2分 の1 ~ 3分の1の費用で生活ができます。豪州は、自然と近代化がバラ ンス良く整備され、地震もなく過ごしやすい国です。

■第4のフラッグ:資産運用を行う国 → 香港、シンガポール、ア ンセン諸国 株式運用、不動産運用等々金融商品を運用した場合のキャピタルゲイ ンに対して税金がかからないことが基本となり、ファンドの種類もかな りあるので、選択肢が広がる部分も大事な選択要素です。

■第5のフラッグ:余暇を過ごす国(地域) → ハワイ、バリ島、 マレーシア、ロンドン、パリ 余暇は旅行気分で行く地域という位置づけなので、たとえばアジアに 居宅があって、旅行でヨーロッパに行くのであれば、日本から行くより、 時間的に半分程度、かつLLCを使えば航空チケットはかなり安くなりま す。

資産運用では、税金が完全無税ということを重視したほうが、PTのメリット を享受できます。ただし、居宅は災害を避けることに重きを置きつつ、税率が低 く、環境が良いことを念頭に考えています。

したた 激動の世界で強かに生きていくには、世界の中で長期的に見て今後の成長が確

実で、何と言っても日本人のことを好意的に見てくれるアジア太平洋地域との関 係を積極的に取り入れ、事業や資産運用に反映させることがポイントです。もち ろん、モナコに行き不動産を購入し、ヨーロッパの雰囲気に浸りながら生活や仕 事をしていくことも一つの選択肢として、ありだと思います。

一時、日本でも大流行したウォーキングトレーナーのデューク更家氏は、モナ コに住み、たまに日本に来て仕事をしていることでも有名で、ヨーロッパの社交 界でウォーキングデビューを果たし、家族でセレブ生活をしています。

第4部 PT ライフを楽しむ秘訣

1 PT ライフの基本的考え方 1. PTライフとは、モノ・金・時間・場所から自由になること

旧来型の生活(1991年2月のバブル崩壊前まで)は、「給与が上がることは あっても下がることはない」、「賞与が出るのは当り前」という前提で社会システ ム自体が成り立っていたため、住宅や教育費、自動車等に多額のローンを組み、 給料が上がっていく過程で返済していくという消費スタイルが当り前でした。社 会全体が右肩上がりで成長していたため、皆浮かれていた時代です。

ところが、1991年2月、株価が3万円に届こうかと浮かれていた日本に大激震 が走りました。突如として、株価が急落しはじめたのです。それから、今日まで の23年間、日本は世界でも経験をしたことがないほどの未曾有の暗黒の時代を 経験したのです。23年経っても、やっとバブル絶頂期の半分程の株価を回復し た程度です。

それだけ、大きな打撃を日本は受けました。その後は、ご存じのように、リー マンショックで世界的な経済危機があり、ようやくそこから抜け出すか抜け出さ ないかのところにきています。国税庁の調査によれば、2010年の賞与や残業代 を含む給与所得者の平均年収は412万円で、リーマンショック後の落ち込みから 戻ったとはいえ、1997年と比べると、給与水準は約13%も下がっています。

そろそろ、気づかなければなりません。企業の体質はバブル崩壊後、非常に慎 重になり、またいつ景気後退がくるか不安視し、自社が儲けても社員には還元し ない仕組みになってしまったのです。終身雇用が当たり前ではなくなり、非正規 雇用が当たり前の社会になってしまったのです。

企業は自社が倒産しないように、リスクヘッジをかけています。そのリスク ヘッジは、正社員数はなるべく増やさず給料は抑え、非正規雇用を増やし、業績 が悪くなると、企業の都合のいいように非正規雇用の人件費を減らし、会社に利

益が残るようにしているのです。

こんなことでは、まっとうな社会にはなっていかないと気づき、ようやく、日 本政府はやっきになり企業に対し、社員の給与を上げるよう、正社員を増やすよ う勧告している状況が続いているのです。

企業が自社を守るために内部留保を高め、不測の事態に備える体質に変わって しまった以上、私たちはその会社に忠誠を誓えば誓うほど、自分の首を絞めるこ とに繋がります。

企業の幹部だけが美味しい思いをして、多くの末端の社員は奴隷のように働か せ、労働を搾取することに専念する企業が増えているのが実態で、企業は社員の 労働(時間)を搾取して成長しているのです。

そんな社会は魅力があるでしょうか。本来、人間は自由に生き、やりたいこと をして、自分が幸せで自分の周りが幸せで、ひいては社会が幸せになることに繋 がることが、人間本来の生き方だと思っています。

誰だって、他人がつくったルールや、まわりの評価になんか縛られたくあり ません。 誰もが心の底では自由に、自分らしく生きたいと願っていて、それは いくつになってもそうなのです。20代はそれでも、自由を求める気持ちが強く、 なんとか束縛から逃れようと努力をしますが、就職し、仕事をはじめ、社会人生 活にどっぶり浸かっていくうちに、いつの間にかそういう気持ちをなくしてしま い、つまらない人間になってしまします。

サラリーマン生活では、定期昇給やべースアップなどで、毎年、給与が上がる ことを前提にできる時代ではなくなりました。「飲食代やタクシー代は経費でま かなう」とされていた管理職は、昔の夢から覚めなければなりません。どの企業 も経費削減を強いられ、今までのように一種のドンブリ勘定的な感覚ではいられ なくなっています。賞与は出ないのは当り前、カットは当り前、もちろん、成果 主義で残業代なし、もしくは残業そのものをさせない企業も増えました。「給与

が低いから、その分、残業で補填しよう」と言っていた時代からは、大幅に事情 が変わってきました。

北欧では経済成長が頭打ちになり、企業に給与を上げる体力がなくなった結果 として、労働時間の短縮が進んでいます。法定労働時間が週37時間に定められ ているのです。週37時間というと1日7時間24分の労働です。朝10時~ 18時30 分で1日の仕事が終わりです。日本でも、同じことが起こるでしょう。いや、す でに起こっています。生き残りをかける企業は残業代を出さないことで人件費を 切り詰め、役職をつけ残業代を出さずに責任だけは重くなる状況にあえぐ人が増 えています。これは、企業にとり好都合だからです。

企業は、安い労働力を提供する非正規雇用や、アウトソースをますます利用す るようになります。アメリカがすでにそのようになっていて、クラウドソーシン グ会社の躍進が目立っています。これは、どういうことかと言うと、今後は「会 社で働きたくても働けない」という事態が生じるということです。究極、「日本 では働けなくなる」、もしくは、企業は日本人を雇用するには、非常に安いコス トで雇用してくるということを意味しています。実際、非正規雇用は年々増加 し、前述したように、国は対策に追われています。

こういう話をすると、「そんなことになったら、家も買えない」という嘆く人 もいます。根本に立ち戻って考えてみると、そもそも家を買えないことは、不幸 なことでしょうか? 家を持つというのは、かつてビジネスマンの大きな目標の ひとつでした。都心から2時間も離れたベッドタウンに生涯働いてやっと返済で きる住宅ローンを組み、毎朝毎晩ラッシュアワーの電車に揺られ1日が過ぎてい きます。

車やブランド品、高級時計など、たくさんの物を所有することが幸せとされた のは、せいぜい90年代までで、

「モノにお金を使わない」 「新しい経験をたくさんするために投資する」

そういう考えがこれからの時代に求められてきます。こういう考えを幸福とす る価値観を持てば、「会社でもっと働きたくても働けない」という、今まではハ ンデやデメリットだったことが、メリットになってきます。

出世や昇進を目指し、それを生き甲斐にして上司、部下の顔色を窺いながら、 自分を殺して何もしてくれない会社のために働くことが何の意味も持たないこと は、冷静に考えれば火を見るよりも明らかです。モノを持たなければ持たないほ ど、身軽になります。身軽になれば、より楽に、より自由に動けるようになりま す。

たとえば、東京で働いている人が地方の会社に転職するといったことが、より スムーズにできるようになります。福利厚生の一環として会社を介して住宅ロー ンを組んでいる人とそうでない人を比べれば、住宅ローンを組んでいない人のほ うが、身軽で移動しやすいのは明らかです。

朝9時から夕方5時まで会社に拘束されることは、その時間に縛られて生きて いるといえるでしよう。典型的な固定化された人生になってしまいます。多くの 人が、この固定化された人生を送っているのは確かですが、果たしてそれは幸せ なのでしょうか。

これからは、できるかぎり縛られない。究極的にはお金にも縛られず、思考を 柔軟にし、自分独自の価値観をもつ。こうして何にも依存することなく自由に生 きることが、新しい幸福の在り方なのです。

私は時代の変化を「チャンス」ととらえています。今は、変化のための絶好の タイミングです。旧来型の固定化された人生から自由になり、自分らしい新スタ ンダードを構築していく。これは変化の時代を生き抜くための知恵であり、おの れを守る防御策でもあります。すべてが変わる時代において、自分だけが「今の まま」、「固定化された人生」では、ゼロではなくマイナスになってしまうので す。

2. 他人と自分を比較しない生き方

固定化された人生をさらに検証してみると、ビジネスマンが目指す「昇進」 「出世」ということ自体、本当に必要なのでしょうか? それが唯一の自分を測 る物差(価値観)なのでしょうか? 出世には興味がないという人も、「年収が

上がる」という理由で昇進を望んでいるかもしれません。

しかし、ひとたび年収を上げようと考えると、誰もがそこにばかり意識がい き、その結果、会社に縛られ、旧来型の固定化された人生を過ごすことになり、 その結果として、幸せでなくなっていくことが多々あります。自分を殺して、会 社に魂を売った上司の意見に従い、自分もこれでいいのだと慰め、あきらめてし まう人生を送ることになってしまいます。

2-1 ポジティブバリュー

そこで選択肢のひとつとして提案しているのが、あえて「昇進」「出世」を考 えず、自らの価値を考え、それを前に出していく生き方、「ポジティブバリュー (positive value:前向きな価値)」という生き方を人生の根本に持っておくことで

す。そういうことがとても重要になります。

「ポジティブバリュー」とは、自分自身の価値、自分が本当にやりたいことを 認識し、それを最も大切なことと位置づけ、生活の基本にしていくことです。

昇進や昇給で年収が上がったとき一番やってはいけないことは、それに合わせ て生活レべルも上げてしまうこと。端的にいうと、家賃15万円の家に住んでい た人が、25万円の家に引っ越し、家具や持ち物のグレードを上げ、食生活も変 えるといったことです。

「このくらいの生活レベルになったのだから、パーティに出なきゃ」

「パーティに出るなら、こんな靴も時計ももたないと」

と、買うべきものは芋づる式に増加し、きりがなくなります。

こうなると、少しでも年収が下がると、すべての計画が崩れてしまい、仮に 収入が変わらなくても、高い生活レベルを維持するための必要経費に縛られて、

「もっと自由に新しい生き方をしたい」「より興味がある仕事をしたい」というこ とができず、身動きが取れなくなり、固定化された人生は、やがて「一体何のた めの人生か?」という疑問に変わり、その疑問が人生そのものを支配し、つまら ない人生になってしまうのです。

もし、あなたが自由な生活を実践したいと思うなら、能力があっても昇進を断 るのです。それを可能にする前提となるのが、他人と自分を比べないことです。 これが大変重要な要素になってきます。自由に生きるためには、自分の価値は何 かを真剣に考え、その価値を最大限に発揮するために、会社に縛られない生き方 をしていくこと。これが、まずサラリーマンがPT化することの第一歩と言えま す。時間と場所に縛られない新しい働き方を選択したら、今まで通りの収入は望 めなくなるという現実を理解しておくことも重要です。

いずれはちゃんと稼げるような仕組みを作る必要がありますが、まずは自分自 身の中に価値を見つけ、会社内での仕事と自分の価値を切り分け、会社の昇進と いう無駄を省くことで、まずは身軽になることができるのです。

すべてを得ようとすると、すべてが得られなくなります。これはまぎれもない 真実で、「絶対に今の年収を減らしたくない」という人に、PTライフへの移行は おすすめできません。そういう人は別のやり方で生きればいいと思います。

同じ状態のまま右肩上がりもしくは現状維持の年収を得るのが難しくなってい る昨今において、自ら身動きとれない場所に自分の身を置くことは大変危険であ り、早くそこに気づき、ちょっとしたヒントを実行に移すことで、もっと自由で 楽しい人生が待っている場所に移ることができるのです。その準備をして行動を

起こしていくことが将来の幸せにつながります。

今後、日本はさまざまなリスクが増します。そのリスクを回避するには、何か ことが起こってからでは遅いのです。皆が浮かれている時こそ、今後のリスクに 備えた準備が必要で、リスクが表面化した時には準備が整っている状態にしてお くことが、私たちの今後の人生にとって、大変重要になってきます。

いつも自由に動き、さまざまな場所でさまざまな文化にふれ、新しいことにつ ねにチャレンジしたい。縛られずに生きていたい。今の自由な暮らしと引き換え に必要以上のお金やモノを手にしても仕方のないこと。こう割り切ることが必要 です。

2-2 「復業」の時代を上手に利用する

会社勤めであれば、年収が下がるといっても100万円、200万円ぐらいです。 大きいですが、どこか別のところで補填できない額ではありません。別のビジネ スで年収を補填することは可能なのです。今は副業を認める会社も増えています し、今後はもっと増えるでしよう。これからの時代、副業でなく、複業の時代 だ、ということを強く認識してください。

会社員の複業としてビジネスをする場合、本業としてやるよりリ夕―ンが大き くなることが往々にして起こり得ます。会社を辞めて本業にすれば、収入は上が り、自由になれるかもしれませんが、リスクを背負わなければいけません。両者 のメリット、デメリットを考え、何を得られるかを模索すべきでしょう。一番よ くないのは、会社にしがみつき、何の成果も出せず、自分の力もつかないパター ン。これではいつか会社からたたき出されるでしょうし、そうなったところで、 何もできなくなってしまいます。

重要なのは、他人を気にせず、自分の道を歩むことができるパターンを作るこ と。終業後の飲みを週3回行く生活を続けているのであれば、ステップ1で週1回

にして、ステップ2で週0回にするとか。思い切って残業をせず、残業にあてて いた時間を複業の準備にあてるとか、意識をもって、時間を賢く使うことが重要 です。

3. 上手に行動や思考を転換する方法

慣れ親しんだ、行動や思考を変えるには、下記の3点が必須になってきます。

1時間配分を変える 2住む場所を変える 3付き合う人を変える 4環境を変える

順次説明していきます。

3-1 時間配分を変える

自分を変えようと思ったとき、単に「これからは○○しよう」と思っても、ほ とんどの場合意味がありません。自分の生活の中で、何かをするための時間をき ちんと確保しないといけないのです。これは決断といいます。決断とは、「決め て断つ」ことをいいます。何かを決めたら、それを達成するために何かを断つ必 要があります。

「これからは運動しよう」と思っても、運動するための時間を自分の生活の中 に確保しないと何の意味もありません。時間は、1日24時間しかなく、今までも 時間を使っているわけなので、物事の優先順位を変えて時間を確保しないと、多 くの場合何も変わりません。

運動を続けるためには、土日にやっている趣味の一つを減らして数時間確保す

るとか、午前中にテレビを見たりゲームをしたりインターネットをすることをや めて、ジムに行く曜日と時間を決める、すなわち、具体的に時間配分を変えなく ては何も変わりません。

「これからはもっと物事を考えるようにしよう」などという漠然とした目標も 同じで、考える時間というものを自分の生活の中に確保しなくては変わりませ ん。その代わり、何か別の時間を犠牲にすることになります。それが決断なので す。

3-2 住む場所を変える

「住む場所を変える」と言われると、自分を変えるためにそれはやりすぎじゃ ないかと思うかもしれません。でも、この方法は実は一番効果があるのです。普 段行き慣れた場所、普段と変わらない景色、普段と変わらない店等々「普段と変 わらない」という環境に身を置くことで、行動も思考も普段と変わらなくなって しまいます。

もう少し違う言い方をすると、「自分の意思を弱くするものから遠ざかる」と いう意味では何にでも当てはまります。たとえば、勉強中にどうしても漫画を読 んだりパソコンで遊んでしまう人は、環境を変えて図書館で勉強するというやり 方もあるし、スマホでついついゲームばかりやってしまう人は、スマホアプリか らゲームを外し、PCからもアンインストールしてしまったほうがいいでしょう。

ダイエットを頑張っているのにアイスクリームをどうしても食べてしまう人 は、アイスクリームをまず買いに行かないこと、アイスクリームを売っていると ころに行かないこと。それが大事なのですが、かえってそれがストレスになり、 ストレス太りをしてしまったりするケースが多々あります。

これらは意志の力で何とかしようとしても、所詮無駄な話で、強制的にそうい う環境に身を置くことで、自ら心と体を諦めさせる、という段階に持っていくこ

とが必要になります。家で勉強すると落ち着かないという人は、勉強している人 がたくさんいる近くのカフェに行くなど、自分が集中しやすい場所で勉強するこ とが大事になります。

人間は本来、意志が弱い生き物なので、自分が意志薄弱になりそうなものには 近づかないことが重要ですが、ついつい欲望におぼれてしまいます。その欲望 を、「いい影響を受けるものに近づく」ということに切り替えることで、成功へ と近づいていきます。

会社員を辞めて何か事業をしたい人であれば、実際事業をしている人と仲良く なり、いつも会社帰りに同僚と居酒屋に行くのではなく、目指す事業の事業家と 会っていろいろな話を聞くとか、自分が興味のあるセミナーに行くとか、強制的 に意識的に何か行動を起こすことで、自分も変わるし、自分の周りの環境も変 わっていきます。

3-3 付き合う人を変える

今まで付き合っていた友人を遠ざけるということではなく、自分がいい影響を 受ける、刺激を受けると思う人と過ごす時間をもっと増やすことで、自分も変 わってきます。しかし、いきなり違う環境に自らが置かれるので、慣れるまで時 間がかかるという人もいるでしょう。

付き合う人を変える第一歩は、出会った人のいいところをまずは見つける、と いう努力からはじまります。いいところが見つかれば、さらに知ってみたくなる のは人間の心理です。いくら周りから尊敬を集めている人でも、イヤに見える所 の一つや二つは持っているものです。しかし、そのイヤな部分を気にして、いい ところが見えなくなってしまう損失より、イヤな部分は目をつぶり、いいところ をフィーチャーしていけば、付き合い方は大分楽になります。

極端な話、その人と一緒に暮らすわけではないので、イヤなところは目をつぶ

り、いいところを吸収する。そのことだけに集中すると、人と付き合うことがと ても楽になり、人間関係がうまく行きます。

英語が話せるようになりたいと思う人は、英語を使っているような人を選んで 一緒に遊ぶとか、仕事をするとか、ランチを一緒に食べに行くとか、いろんな手 段を使って近づくことで、得られることはたくさんあります。そう行動すること にも意義があり、普段の固定化された生活に柔軟性を与え、行動が柔軟になれ ば、考えも柔軟になりますし、逆に考えが柔軟になれば、行動も柔軟になりま す。

行動という意味では、今ではネットを使ってさまざまな行動ができます。 Twitterでは、自分がいい影響を受けるような人を選んでフォローするとより良い 影響を受けますし、Facebookでは、気になる人に友達申請すれば、友達のよう に気になる人が思っていることや行動がわかって参考になります。その辺はした たかにいきたいところです。

3-4 環境を変える

環境を変えないと、自分自身は変わりません。自分自分を変えるのは、他人で はなく自分です。したがって、他人を気にすること自体無意味になってきます。 他人は自分の生活を保障してくれません。であれば、賢く考え、他人との付き合 いを変え、まずは自分と向き合い、

・自分は何をしたいのか? ・自分の価値は何か? ・自分はこの会社で何を担うか? ・自分は自分の人生をどうしたいか?

そういうことをまずは考え、答えを見つけ出すことが重要です。答えは、簡単 には見つかりませんが、上記を意識して生活するのと、何となく過ごす生活とで

は、1年後、2年後に大きく差がついてきます。

PTということをテーマに話をしていくと、人生という大きな枠組みをどうす るかに当たります。その枠組みの中で、「仕事」の位置付けも固めていく必要が あります。

PTというと、「どこでも仕事かできる」というイメージを持つかもしれません が、たとえば、東京でやっている仕事をいろいろな場所に持っていき、そこでこ なすということではなく、PTとは「どこでもビジネスができる」という部分も 含め、いろいろな国や地域でビジネスを行っていくイメージと思ってください。

PTライフは、準備なしでできるものではありません。旧来型の固定化された ライフスタイルに縛られていたと気づけば、誰でもPTライフができる環境は、 あなたの周りにはすでに整備されています。しかし明日からPTになります、と いうものではありません。今まで会社員として過ごしてきて、なんの準備もな く、いきなりPTライフに転換しようというのは無謀な話なのです。

やみくもに会社を辞め、家も捨てたら、Permanent TravelerでなくPoor Traveler (貧困な旅行者)になってしまいます。会社勤めであれば、PTになると多くの場 合、まずは年収が下がる覚悟が必要です。会社を辞める、という大きな選択をす るほとんどの人は、すでに別の就職先が見つかっているか、自分で会社を興す

か、そのどちらかです。PTもそういう発想です。

会社を辞めてPTになったとたんに、収入がゼロになったということですと、 PTライフは続きません。自分で起業するか、就職先を見つけるか、どちらにな るかはPTライフを送る人次第ですが、何のためにPTになるか、PTになった際、 どんな仕事に就くか、そういったことをある程度固めていく必要があります。

「世界2 ヵ所で暮らし、年に10 ヵ国も移動しながら仕事と生活をする」という ようなPTライフは、10年前であれば不可能だったでしょう。できたとしても、 資産やスキルの面での制約が多く、非常に限られたごく一 部の人の特権でした。

ところがテクノロジーの発達によって、誰でも多様な生き方ができる環境が 整ってきています。世の中も労働環境も個々の働き方も変化している分、私たち ができることも日々、進化しています。東日本大震災を契機に、変化を実感した 人も多いと思います。あの悲惨な災害で私たちは多くを失い、待ったなしで意識 改革を迫られました。働き方もそのひとつです。

たとえば、1週間ほど自宅待機となった会社が多くありますが、パソコンとス マートフォンさえあれば、どこでも仕事ができたという人もたくさん出てきてい ます。 節電のために通常業務が短縮されたけれど、「早く終わらせなければ」と いう制約があったおかげで仕事がはかどったという人もいます。出社、退社の時 間をずらすことで、通勤を見直した人もいるでしょう。また、夏場には省エネと クールビズの広がりも手伝って、スーツを着用しなくてもよいとされた企業もあ り、「スーツでなければ仕事ができないというのは何だったのか?」と感じた人 もいると思います。実際、私もスーツを着ることもありますが、圧倒的に普段着 で仕事をするほうが、クリエイティブな発想が生まれやすくなります。

4. 場所と時間に縛られないで働く

これが恒常的に、誰にでもできる時代が来ています。それでは、なぜ多くの人 はPTライフについて、「一部の人の特権」と思ってしまうのでしょうか?

すでに述べたとおり、私たちは多かれ少なかれ、旧来型の固定化されたライフ スタイルに縛られています。極端な言い方をすれば、企業の都合のいい形に洗脳 されているのです。全社員を同じ時間に同じ場所に集めれば、管理する側は楽で す。人間をヒツジ化し放牧するのではなく、栅付きの牧場に入れておくようなも のなのです。

会社の立場に立って考えてみると、納得します。自分の管理下におけば、どの ような仕事をしているかを把握ができ、タイムカードという時間の枠組みを評価

の一つとすることで、人間を会社の枠にはめていきます。つまり、企業は、働く 人間よりも管理する人間に都合よくできているということです。

今の日本の労働体系は、かつての終身雇用といった家族的な経営から、欧米タ イプの成果主義へとシフトしてしまいました。これは、良し悪しがありますが、 社会全体が欧米タイプに変わってしまったので、それに合わせ動くことが賢明な のです。

・日本的な経営=家族的な経営、好き勝手ができない。 ・欧米的な経営=成果主義。自由。自己責任。

今の時代は完全に欧米的な環境になってきています。こういう時代になってき たからこそ、自らを磨き、自分や家族を守るためにすでに存在するPTという生 き方を最大限に使い、賢く生きることが大事なのです。縛られることのないPT ライフを選択することは、社会に順応した究極のライフスタイルといえ、自らが 選択し自ら動き、自ら開拓して自ら自由を手に入れる究極の方法なのです。

海外を転々としているグローバルビジネスマンは、さまざまな出会いや経験、 刺激を受けて、考え方が柔軟で、オープンな人が多いのが特徴です。どんな状況 にあってもそれを受け入れ自分のものにしてしまいます。

ニュージーランドに移り住んだ楠田さんは、大学を卒業し一流企業に入ったは いいのですが、自分の夢であったワインに携わる仕事をしたいと、32歳の時に 会社を辞め、妻と生まれたばかりの長男とでドイツに留学。お金がなかったので 屋根裏部屋を借り、家族3人で暮らしながらワインを学び、今度は、自分の作り たいワインがニュージーランドでならできるかもしれないと、ニュージーランド に移住。お金がまったくなくなりかけた時、知人からワイン畑を借りてみないか と持ちかけられ、悩んだ末、ワイン畑とワインを担保に5,000万円を借入れ、勝 負に出ました。

ワインについては詳しくなりました。しかし、ワイン作りはまったくの素人

で、近所のワイン畑の方から、「素人がよくやっているわね」と笑われながら過 ごす日々が3年間続きました。

ただ、楠田さんにはこだわりがありました。機械でブドウを摘むことはやめ、 自らの指先で一粒一粒ブドウを吟味しながら丁寧に摘み、樽に仕込むことを徹底 していきました。そして、ワインを作り始めて9年目のある日、一人の女性が楠 田さんのワイン畑を訪ねてきました。その女性は、エリザベス女王のワインを 決めるワインアドバイザーのジャンシス・ロビンソンさんでした。ワインジャー ナリストでバッキンガム宮殿に納めるワインをセレクトしている彼女が楠田さん のワイン「KUSUDA」の噂を聞きつけてテイスティングにやってきたのです。し かし、テイスティングを終えたジャンシスさんは何も言わずに帰ってしまいまし た。

その3か月後、楠田さんのワインを評価した記事が送られてきて、エリザベス 女王のワインに選ばれたことを知りました。そして、ロンドンで開かれたワイン コンテストでも金賞に輝き、「KUSUDA」の名前は世界中に知れ渡ることとなっ たのです。

会社を辞めてドイツに移り住み、家族3人で屋根裏で生活する日々が続き、そ の後ニュージーランドでは長女が生まれました。家族4人でドラム缶風呂の生活 を続けた末につかんだ世界一のワインセラー「KUSUDA」の評価の記事内には、

「ワインの中にファミリーの誇りを感じた」との評価がありました。味だけでは ない、まさにワインの深みを感じるストーリーだと感激したことを覚えていま す。

ワインセラーになる夢。ハイパークリエーターになる夢。作家になる夢。旅行 記の有名ブロガーになる夢。世界を股にかけたスーパーアフィリエータ―になる 夢。世界一のブラックバスを釣る釣り人になる夢。星空ばかりを撮る写真家にな る夢......。なんでもいいのです。夢、やりたいことに素直に生きること、そして それを続けること。これが自らの幸せの肥やしになり、それを続けていくことで 自分も周りも納得した人生を送れるのです。

組織にしばられず、しがらみに縛られず、仕事の種を蒔きながら、海外と日本 を拠点に生活を送ることが究極の形ですが、もともと農耕民族である日本人は、 狩猟民族であった欧米人に比べて一ヵ所に住むのが好きな定住志向型といえま す。

自由よりも一定の年収や安定を望むという人は、PTには向きません。肩書、 「有名企業の部長なんてすごい」という外部からの評価、「ビルの高層階にある快

適なオフィス」という恵まれた環境が手放せない人もまた、PTに向きません。

会社というのは非情です。本人の意思にかかわらず、突然、転職を勧告される のです。何ひとつ変化を経験しないまま40代になり、いきなり「変われ!」と 言われたら途方に暮れてしまうのは当り前です。今すぐPTライフに移るつもり はない人、また、すぐには会社を辞めるつもりはない人でも、将来の安全策とし て、PTライフについて準備をしておいて、得はあっても損はありません。

2 PT ライフ 6 つのステージ 1. PTライフ6つのステージ

PTライフをはじめるには、準備期間がそれなりに必要です。次に、PTライフ を6つのステージに分け、ステージ毎に何をしなければならないか、説明してい きます。

第1ステージ:ベースの構築期(仕事、営業、海外生活のノウハウ蓄積) 第2ステージ:方向性の模索期(ビジネスの種を蒔きインカムを作っていく) 第3ステージ:未来につながる実績を残す時期(ノウハウを完成し成果を上げる) 第4ステージ:PTライフへの移行期(PTライフのリサ一チと人脈作り) 第5ステージ:実践期(PTライフの実践) 第6ステージ:シェアの時期(ノウハウを伝えて、仲間を増やす)

2. 第1ステージ:「ベースをつくる時期」

学校を卒業し、社会に出た後は、べースをつくる時期です。まずはべースとな る仕事のノウハウを学びます。いろいろな職種を経験すると思いますが、たとえ ば営業職であれば、営業とは単にモノを売り込むことではなく、ビジネスに不可 欠となる交渉力、コミュニケーション力を使い、相手の心を開き、納得感を与 え、自社の商品やサービスを使ってもらうノウハウを磨くことが必要です。

同時にタイムマネジメントのノウハウも必要になってきます。タイムマネジメ ントの目的は、「海外にいながらビジネスをするノウハウ」と「生活するノウハ ウ」を蓄積するために、そのための時間を捻出することです。余暇を使って海外 にいき、実際に1週間程滞在してみて、身体を徐々に海外生活に慣らしていくの もいいでしょう。あれこれ欲張るより何かに集中してやることが大事です。

この第1ステージでは、時間やお金を節約しながら進め、身体でPTというもの の初歩的な感触を身につけ、インフラとしてのスキルを整え、その先に行く準備 をします。この時点でPTが自分に向く、向かない、できる、できないを振るい にかけることができます。

3. 第2ステージ:「PTライフの方向性を模索する時期」

このステージに進むと、PTになる気持ちがますます高まってきます。同時に 本当にこの方向でいいのかと考える時期でもあります。どこに住めばいいか、収 入はどのように確保すればいいか等々、いろいろな角度からPTの検証を自らに 問いかけながら進んでいきます。 一人で悩む時間が多くなるかたわら、勉強し たり、資格を取ったり、多くの人に会い、刺激を受け、刺激を与え、いろいろと 活動をする時期でもあります。場合によっては、外資系企業に就職をして、海外 生活を希望するという手もありかと思います。

もしくは、日本からも近い香港などで会社を起業して輸出入をする等々、この 時期は模索と同時に具体的なシミュレーションをしていく時期になり、PTのベー ス作りになります。この時期には、ビジネスの種をあちこちに蒔いておくことも 必要です。一つでも多くの仕事を経験しておくことで、PTになった際にも役立 つことにもなりますので、積極的に動くことが必要になってくる時期です。

4. 第3ステージ:「未来につながる実績を残す時期」

この時期では、実際行動を起こし実績を残していきます。たとえば、香港に会 社を作り、日本から香港に商品を輸出し、香港で商売をするベースを作る。シン ガポールの企業に転職し、将来はシンガポール近郊に移住することを含めた準備 をしていく。マレーシアのロングステイビザを取得する準備として、準備資金を 稼ぐため貯金をする等々。第3ステージは、PTライフに向けた実績作りをはじめ る時期になり、この時期では、経営ノウハウ、組織を動かすノウハウ、財務的な

知識、成果を上げる仕組み等々のスキルを一気に自分の中に構築する時期になり ます。

実践を伴い動く時期であり、感覚的には1年で10年分ぐらい働くようなイメー ジで臨むことが大事です。結果を出すという意味で、人の何十倍もやる覚悟が必 要です。この時期は仕事に集中し、濃密に働くことが必要です。これが将来の PTビジネスの土台になっていくのです。

5. 第4ステージ : 「PTライフへの移行期」

成果を出したらステップアップし、新たなライフスタイルを作っていきます。 そのままさらに成果の延長戦でより大きな成果を求めることもできますが、本格 的にPTの拠点作りをしていくリサーチを行うと同時に、どこでも仕事ができる ようにPTビジネスをスタートさせていきます。

住むべきエリア、生活コスト、ビザ、海外でビジネスをするための必要事項、 人脈作りなど、調べなければならないことをクリアにしていきましょう。いった ん成果を出した経験をもとに動くので余裕ができますし、移行期こそPTライフ の構想をブラッシュアップすべき時期ともいえます。第3ステージで仕事に集中 するあまり、PTとしてのライフスタイルが中途半端になってしまうと、そもそ もPT構想が遠のいてしまいます。

この第4ステージが確立することで、PTライフがようやくスタートできます。

6. 第5ステージ : 「PTライフの実践」

PTライフを実践するうちに、働き方、暮らし方のノウハウが構築されてきま す。日本と外国を行き来しているうちに、ロサンゼルスやゴールドコーストで も、東京やハワイ、香港と同じように過ごし、どこにいても同じクオリティで生 産性の高い仕事をし、自分らしい暮らしもできるようになります。

要するに、自分がいる場所にかかわらず、仕事ができるようになる準備をし て、実践しているからこそ、それができるのです。当り前ですが第4ステージか ら第5ステージに移ることは、PTライフのイロハをある程度知り、多少なりとも 経験を積み、やる気をMAXの状態にもっていき、実践に臨まなければ、くじけ てしまいます。

第5ステージでは、海外で仕事をすることは当り前の状況になっています。そ れが、本の執筆なのか、ワイン作りなのか、アフィリエータ―なのか、WEB制 作なのか、コンサルティングなのか、輸出入なのか、コピーライターなのか、何 なのかは、それぞれ各人の想いや経験次第ですが、PTライフを推し進める原動 力の一つとしての仕事-それが大きな割合を占めます。

7. 第6ステージ : 「PTライフのシェア」

PTライフを確立していくと、必ず、自らの経験をシェアする時期に突入しま す。自ら経験したノウハウや実践での出来事をあまねく人々にシェアすること で、自らの存在意義を確認したくなります。同時に、PTライフの仲間、PTライ フをやろうとしている人に対し、自分のノウハウを伝え仲間を増やしていく機会 が増えます。

こうした時期を迎えると、志が同じ人と自然につながりができてきます。日本 人は海外に出たがらないとよく言われますが、まんざらそんなこともありませ ん。シンガポールで仕事をする若い人も増え、ベンチャー企業などでは、日本で 起業するより、シリコンバレーで起業し、注目を集めている日本人も多くなって きていますし、前述のようにニュージーランドやオーストラリアでPTライフを 実現している人も多くいます。

3 PT ライフスタートのためのトレーニング 1. 劇的に環境が良くなってきた

私は今後、PT関係の友人を増やし、サポートしていくことも考えています。 今までは日本の環境も整っておらず、まだ早いなという感じでしたが、ようやく 時期がきたと思います。

あなたは今、どのステージにいるでしょうか? 第1、第2ステージの方が多 いのは分かります。第3ステージの方もいることでしよう。いずれにせよ大切な のは、段階を経て準備をしていくこと。長期的視点をもって、今のステージにふ さわしい行動をすべきだということです。

一生懸命に働くべきときは、一生懸命に働く。余裕ができたらゆったりと集中 して考える時間をもつ。もちろん、全部一度にやれる器用な人もいますが、多く の人はステージを切ってクリアすることで、PTライフを実現に向けて進めてい けます。

今の日本と世界は、PTにとって非常に恵まれた環境にあります。スマホを使 えば、世界中どこからでも時差なく情報のやりとりができ、仕事もできてしまい ますし、パソコンがあれば、場所に関係なく資料を作ることができ、クライアン トに提案、報告もできてしまいます。

移動にかける時間が短縮され、移動のコストも断然安くなっています。LCCを 使えば、大抵の国に非常に低料金で移動できます。日本からマレーシアまでエ アーアジアを使えば、1万円そこそこで行けてしまいます。日本の中で移動する コストより安いコストで外国に移動ができる時代です。

・日本の環境があらゆる面でリスクを伴う環境になってきた。 ・日本にいても外国にいても、ネットやPC、スマホ等の通信手段を使えば、

日本と変わらない仕事ができる環境が整っている。 ・移動コストが激安になってきた。 ・アジアを中心に、世界的に経済が発展して、仕事も生活もし易い環境に

なってきた。

PTライフの環境は数年前の環境と劇的に良くなってきていて、早く始めれば 始めるほど有利と言え、チヤンスも広がっていきます。次は、PTのノウハウを 身につけ、準備し、トレーニングし、思考を変えるには、具体的にどうすべきか を述べていきます。

2. どこにいても仕事ができるのがPTスタイル

場所にも時間にもお金にも縛られず、会社に依存せずに自分の価値観で生きて いく。そうしたPTライフを実現するためには、今後どのような仕事をし、どの ように働けばいいのでしようか? 「仕事」の考え方と準備、実践的なトレーニ ングについて触れていきます。

2-1 会社を辞めるのではなく「複業」を考える

PTライフに移行するには、PT的に働けるよう、自分の仕事を組み立てておく 必要があります。このとき大前提として肝に銘じておいていただきたいのは、会 社をすぐに辞めてはいけないということです。

「PTになるには会社を辞め、フリーにならないと」と、いきなり辞めてしまう のは、無謀な賭けです。最終的に目指す着地点は「会社に縛られない生き方」だ としても、まだ一人でやっていく実力もついていないうちに、飛び出してしまう のは危険です。

そもそもPTは、いくつかの仕事を同時並行的にやることが大切になってきま

す。

ここでは、継続的に入ってくるお金のことを「固定収入」と名づけます。こ の固定収入を確保しつつ、ほかの仕事の可能性を模索していきます。つまり、会 社勤務をしているのであれば、その仕事をきちんと続けながら、他にできるビジ ネスはないかと試行錯誤していきます。

「会社員は自由がなくていやだ!」と言う人もいますが、固定収入は保証され、 ある程度の自由が利く会社員という立場を利用しない手はありません。「複業」 を認める企業も増えてきている時代ですから、このメリットを最大限に活かして いきましょう。「会社員だからPTライフはできない」ではなく、「会社員だから こそ、PTライフの準備が安心してできる」と気持ちを切り替えることが大事で す。

今の仕事を続けながら、PTへの道を模索する。こう提案すると、「まずは本業 である会社の仕事だけに集中したほうが、最終的にうまくいくのではないか」と いった意見が出ます。第1ステージにおいては当然、本来の仕事に集中すべきで、 第2ステージ以降、自分のスキルのベースが整った後に、PTの道を模索していく べきなのです。

たとえば、会社であれば、取引先が1つというのは危険きわまりない状態です。 同じことが個人にも当てはまります。仮に、「我社は取引先が1社しかなく、売 上げの100%はX社から来ています」という会社があったら、「そんな会社、大丈 夫だろうか?」と不安になります。X社が倒産したら、その会社も共倒れです。 また、1社に依存していると、交渉力がなくなってしまい、「御社と取引をやめ てもいいんですよ。それがいやなら値下げに応じてください」と言われたら要求 をのまざるを得ません。そんな状況では、いくらいいものを作ったところで値切 られ、不本意な仕事になってしまいます。

ある1つの会社だけの社員として働くことは、この状況に近いといえます。「会 社と対等の交渉力がない」、「会社が倒産したら路頭に迷う」というリスクを抱え たまま漫然と働いていていいわけがありません。「会社を辞めたら明日から生活 に困ってしまう」という状況では、意に沿わない日々が続いても、我慢して働き

続けることになります。

そして、1社に固定された状況では、余裕もできません。その会社を辞めても 大丈夫というくらいの余裕を持つためには、複業を作ることが大事になります。 PTを目指さない人であったとしても、働きなからもう一つの仕事を探したほう がいいのです。

2-2 できる限り多くの種を撒いておく

PTは、何かの組織や集団に属するのではなく、個として生きることでもあり ます。だからこそ、他の人とのコラボレーションが大切です。すでに、スキルが ある個人と個人が力を出し合って、ビジネスを進めていく時代がきています。し かし、いきなりコラボレーションをしようと思ってもうまくいきません。目の前 にある仕事やお金をほしがっていては、対等なコラボレーションが成り立つはず もなく、できたところで続きません。

人のつながりも、お金も、仕事もみな同じです。結局のところ、「本当にいい もの」とは、まず何か行動した結果として、後ろからついてくるものなのでしょ う。目の前にある仕事やお金を追いかけているようでは、自分らしい働き方など 永遠にできません。焦ってそうならないためにも、やはり固定収入の複数確保が 大切です。

固定収入は、最初は会社からの給与ですが、やがて複数の候補の仕事のなかか ら、定期的に収入が望める仕事が育っていきます。それがいずれ、新たな固定収 入となるでしょう。そうなれば、会社を辞めるという選択肢が出てきます。

この場合の固定収入は、「本業」として位置づける必要はありませんし、金額 として少なくてもかまいません。給与以外に事業や不動産、利子や配当、投資、 アフィリエイト、販売など、それぞれ徹底的な勉強は必要ですが、多様な種類の 収入をつくることが大事になってきます。継続して入ってくるものであれば、

5万円でも10万円でもいい。「このくらいあれば、最低限の生活は何とかなる」と いう額を確保することがポイントです。

複業になりうるもう一つの仕事とは、今の仕事と引き換えに手に入れるもので はなく、仕事を増やしていくイメージです。最初から大きな売上げを狙って一点 突破でうまくいくケースもありますが、一つの案件ばかりにこだわっていること が原因で、なかなか前に進めない場合もあります。ポイントは、一つの仕事にこ だわらず、種をいろいろ蒔いておくことです。長期的な視点で複数のビジネスを やってみれば、そのうちどれかが育ってきます。

この余裕をもつためには、会社に勤めている、あるいは今なんらかの事業を やっているという固定収入が必要です。安心材料があれば、目の前の売上げに飛 びつき、他のものを失ってしまうこともありません。

ヤフーは1995年に創業されました。その頃はインターネットを知っている人 は ほとんどいませんでした。しかしもの凄い可能性のあるビジネスだと感じた 孫正義さんはは、ヤフーの創業者、ジェリー・ヤンさんにシリコンバレーで会い、 直ぐに出資の提案をし、運よく受け入れられ(というか、当時創業間もないベ ンチャー企業に将来を感じ、100億円を投資した孫さんの先見の明はもの凄く、 20年経った今ではヤフージャパンの時価総額が3.5兆円以上、実に数百倍以上に なっています)、今のソフトバンクがあると言っても過言ではないほど、ヤフー はソフトバンクの財務面等々に貢献しているのです。

話はそれましたが、海外には宝がたくさんあります。その宝を見つける方法の 基本は、同じ地域や同じ会社、1 ヵ所に留まらず、いろいろな経験をしながら、 世の中を見て自分で確かめ、たまには怪我をし、たまにはいい思いをし感動し、 すべての事象を吸収することです。自分の肥やしにしていき、その中からまた面 白い話が出てくるのです。

たくさん蒔いた種の中から、何が育っていくかは、あとから分かることです。 これはすなわち、できる限り多くの種を蒔いていくのがベストということなのです。

PTライフは、「自分は何を選択するか」という点に鍵があります。いろいろな 物事を増やすのではなく、削ぎ落として本当に必要なものを選び、さらに減らし ていく。これまで増やすことばかりを追求してきた人たちにとっては、「選んで 減らす」ことはとても難しいかもしれません。でも、減らすことによって自由度 が増し、自由度が増すにつれ、だんだんどこにいても生活でき、どこにいても仕 事ができるようになってきます。

何を選び、何を捨てるかを決めるには、選ぶ力、決断する力が何より大切で す。選択力を高める最良の道は、「考え続けること」。自分は何のためにPTライ フを求めているのか、そのために何をすればいいのか、思考することです。次 ページからは、PTライフの土台となる思考とはどのようなものかを述べ、そう した思考を身につけるトレーニング法を紹介していきます。

3. PTライフの思考法

3-1 柔軟な対応力を養うために

PTライフに不可欠な要素は、柔軟な対応力といえます。PTライフに思考の柔 軟性が必要な理由は、さまざまな人や文化とかかわってこそ、成立するものだか らです。自分と違うやり方、旧来型の固定化した生活とは違う考え方にぶつかっ たとき、そこで拒絶してしまうと立ちゆかない場面にたくさん遭遇するのが、 PTライフです。たとえば他の国に行った際、日本とはまったく異なるやり方や 考え方に遭遇します。

そんなとき、「ああ、分かっていないな。日本だったらこうなのに」と思い始 めたら先に進めなくなります。そして、何より楽しくありません。相手にしてみ れば日本流のやり方が「まったく異なる」わけです。

PTライフを送る過程では、世界のあらゆる場所で自由に暮らし、働くことで 想像もつかないような文化を持つ人たちとコミュニケーションを取るシーンも出 てくるでしょう。異なる思考や環境を受け入れる柔軟性が大切になってきます。 大人になればなるほど、思考というのは固くなります。自分の中の常識、正しい と思う基準がどんどん増えてきて、変えづらくなってきます。

とくに同じ会社に長く勤務していると、企業文化というものが知らないうちに 体にしみ込み、働いている会社のスタンダードと自分のスタンダードが同じにな ると、会社なしではどうしていいか分からない状態に陥ってしまいます。そうな ると、会社としては、その人に対して3つの見方をしていきます。一つが、会社 としてとても必要なキーマン的な存在。そして、もう一つが会社として厄介な存 在。そして、もう一つが、どうでもいい存在。

自分は会社なしには生活できないが、会社はその人がいなくても回っていく、 ということになるのは最悪です。しかし、その最悪の事態になるケースが一番多 いのです。その最悪のケースに、私たちは備えなければなりません。その一つが 自分自身の複業化なのです。

昔は今よりも生き方、働き方が画一的で、金太郎飴にように誰もが同じように 動いていても社会が成長していたので、それで良しという風潮がありました。会 社のスタンダードに頼って固い頭のままでいても、大したことはなかったので す。

しかし、これからは、個々が細分化され、成長路線が続く社会にはなっておら ず、創意工夫、クリエイティブ力という部分が大きく求められます。困難な状況 をいかにして打破していくか。それは金太郎飴的人材では打破できず、クリエイ ティブ力が求められます。現代は、まさにそういう時代で、かつ世界がそういう 方向に向かっていることを認識しなければなりません。

たとえPTライフを目指さなくても、柔軟思考なしでは危機的状況に陥ると考 えています。柔軟思考を備えるのに、遅すぎるということはありません。退任す

るときにようやくパソコンを使い始めたのに、今ではTwitterやFacebookを自在 に活用している大手百貨店の元社長など、50代、60代でも柔軟に考え、いきい きと生活している人が何人もいます。

肝心なのは「人間誰しも、年とともに頭が固くなっていく」と自覚することで す。固まっているのに気がつかないのが何より恐ろしく、「自分は絶対に正しい」 と思った瞬間から、年齢とともにさらに固くなります。しかし、自覚さえすれ ば、柔軟に変えることができます。

次に、積極的に自分と異なる思考や文化に触れることで、脳内ストレッチを行 うことの大切さを認識しなければなりません。異文化に触れるために、外国で暮 らしてみる、少し長めの旅に出る。引っ越し等を含め、頻繁に移動することはと ても有効です。

海外に出ると、世界各国から集まったたくさんの変わった人たちと出会いま す。日本的な思考が残っていつつも、「まあ、こんなもんかな」と思わなければ やっていけないことの連続で、そこからだんだんと思考は変わっていきます。日 本の常識は世界の非常識なのです。その体験が大事で、人生をクリエイティブに していくエッセンスにもなります。

「自分が思っていること、見てきたことが正しい」という思考を変えない限り、 異文化や慣れない環境に適応できないのです。なかば強制的に変える必要があり ます。自分のポリシーや方向性を変える必要はありませんが、臨機応変になれる 能力が大切だということです。

「臨機応変になる」といっても、万人と上手に付き合おうと言っているのでは なく、自分のライフスタイルを考えたとき、合わない人と無理に合わせようとし なくてもよく、ただ、拒否するのではなく、一旦受け入れ、必要以上に近づかな ければいいのです。社会では、利害関係がある人と付き合わざるを得ないシーン もあります。

会社に属していれば、固定されたビジネスなので、無理をして合わせ続けるこ ともあるでしょう。しかしPTのように柔軟なビジネスでは、相手と合わないと なればリセットして、別のビジネスに移行することもできます。

人間関係も自由でいい。これはわがままではなく、無理して合わせるのは、お 互いにとってなんのプラスにもならないことなのです。「合わない相手と断絶す る」という極論ではなく、人当たりの良さはある程度は必要です。そのうえで、 合わない人とは会わなければいいのです。「あなたとはそりが合わない」と絶交 宣言するまでもなく、ゆるやかにフェードアウトしていくのが、PT風といえま す。

3-2 ネオシンプルという考え方

シンプルであることも、PTライフに必要な思考です。何かを減らしていくこ とが求められる今の時代、気づかずに、いまだにプラスしようとしている人に は、PTライフは向きません。前述したとおり、モノにこだわり、生活レベルの 維持に心を砕けば砕くほど、どんどんがんじがらめになります。とらわれ、固定 されたライフスタイルがどれだけ息苦しいか。いや、それが自然だと思っている 方々のほうが多いと思いますが、考え方次第、行動次第で、ライフスタイルは劇 的にクリエイティブになります。

モノや旧来型のスタンダードを減らしていくことによって、身軽になります。 シンプルなライフスタイルになれば、生活費も下がり、仮に収入が下がっても可 処分所得が増えます。すると、より身軽になって、移動もしやすくなるのです。

「ダウンサイズする」、「シンプルに生きる」と言うと、第一線を離れた田舎暮 らしといったイメージがありますが、PTライフという観点で提案するのは、「ネ オシンプル」とでも言うべき価値観です。すベてをそぎ落として仙人のような生 活をするわけではありません。

ネオシンプル思考とは、多くを持たず、必要最低限のモノをフル活用し、自由 でしばられない生活を享受しようという考え方です。たとえば、最先端のテクノ ロジーがあれば世界のどこにいようと情報が得られるし、人とコミュニケーシヨ ンできるし、もちろん仕事もできます。ネオシンプルは、「モノがなくても我慢 して生きる」、「少ないお金で生活する」というものではありません。持てるけれ ど、

・持たないという価値観 ・節約ではなく、選択

暮らしでも仕事でも、やり方を工夫し、追求した上でのシンプル。減らすこと で自由が増えるという、いわば前向きなシンプルが、ネオシンプルということで す。わかりやすい例が、アップルの製品でしょう。スティーブ・ジョブズは、時 代の流れと同様、多くの不要なものを削り落とし、ネオシンプルを追求していま した。その基本は、日本の禅にあったことは有名です。

昔は「たくさんのものがついているのがすばらしい」とされていましたが、今 は、iPhoneのように、二つ折りでもない、ボタンも1つしかない、分厚いマニュ アルもない、ミニマムでわかりやすいものが評価されています。アップルの製品 についていない機能は、コストに見合わないから削減された部分も多少はあるか もしれませんが、必要であるけれどあえて捨て、その結果として生み出された自 由でネオシンプルなものに仕上がり、世界中で支持されました。

車もブランド品も欲しがらない若い人たちが「草食系で欲がない」と非難され る風潮があります。彼らは時代に合わせて進化しているだけで、持とうと思えば 持てるけれど、いらない、たくさん持ってもかっこ良くないし、楽しくないとい う発想に近いと思っています。レオナルド・ディカプリオが、当時愛車としてい たフェラーリからプリウスに乗り換えました。まさに、ネオシンプル的な生き方

「節約から選択」は、セレブが先取りし、すでに実践しているのです。

3-3 効率化する能力を養う

モノより経験を重んじるPTライフでは、所有に使うお金があれば経験に使い ます。違う文化に触れ、違う働き方をし、一つのことだけではなく、マルチ的に トライしていきます。PTライフには、効率の追究が不可欠です。仕事や生活の 雑事について、自分でやらなければならない部分は可能な限り効率化し、アウト ソーシングできるものは徹底的にアウトソーシングする。自分の時間は1日24時 間ですが、手伝う人の時間を自分の時間にプラスすることで、自分の時間を増や していくのです。

非効率でもPTライフはできるかもしれません。お金が余っていて、働かなく ても生きていけるような人は、専用スタッフを雇用して、生活の拠点を多国籍に 展開することはできます。しかし、多くの人は、PTライフの部分だけで仕事が 伴っていないと、包括的なPTライフなど成り立ちません。

そこで通信ネットワーク等(オンラインでのコミュニケーション)を使って効 率化していくわけですが、こうした話をすると、決まって違和感を口にする人が います。

「なにもかも効率優先でいたら、つまらない人生になる」 「効率性を私生活にまで持ち込んだらつまらない」

こんなことを言う人もいますが、別に私生活にまで持ち込む必要はありませ ん。上司や部下、対顧客もそうですが、自分の家族や友人など、やはり人間関 係、人対人のものは、すべてを効率化することはできません。「夫婦関係も効率 化する」とやり始め、「誕生日や記念日のプレゼントを忘れず欠かさず贈れるよ うに、自動発送できるサービスを利用する」となっては、いくら豪華な品でも、 気持ちがこもったお祝いにはなりません。

気持ちの部分にまで効率性を持ち込んだら、いくらお金や余裕があっても、人

生は豊かになりません。効率化すべきものと、非効率でもいいものを見分ける力 が必要です。何でも効率化してしまうのではなく、何を効率化するかを選ぶ能力 が必要なのです。

効率化の目的は、自由になることです。縛られない楽しい時間を増やすため に、ムダな時間を効率化していくということです。ひたすら効率化のテクニック を追究し、それ自体が目的化してしまうようでは本末転倒で、効率追究マニアに なったり、どうでもいいことを一生懸命に効率化しようと、逆にムダな時間を使 うことになってしまいます。時間を生み出すため、自由になるために効率性を求 める。この点を、キチンと押さえておきたいものです。

4. PTライフとお金

4-1 重要なのはお金の遣い方

PTライフを送るために、どこにいても収入を得られるようになる力を付ける ことが大切です。しかし、それ以前に重要なのが、お金の遣い方です。PTライ フで必要なのは、お金を稼ぐ知恵でも儲けるノウハウでもなく、お金についての 考え方で、PTライフはお金がなくてもできるものですし、逆にどんなにお金が あってもできない人にはできません。大切なのはお金についての考え方であるこ とを理解することが第一歩です。

「いいよな、平さんみたいに自由な生活は......」と、いろいろな方々にこう言 われることがあります。稼ぐ必要がないほどの資産家たちも羨ましがるのです。 その気になれは世界中に家を持ち、飛び回れる人たちに、「ぜひ、やってみたら いいじゃないですか」と言うのですが、彼らは皆首を横に振ります。

ビジネスで結果を出す人などは、本当はPTライフができるのに、時間や場所、 精神的に縛られてしまっていることが多々あります。「物理的に」PTライフなど 無理だと思い込んでいます。一方、「僕は会社員だし、お金がないから、PTなん

かできません」とあきらめる人たちがいます。かたや時間、かたやお金という違 いはありますが、両者とも資産に関する感覚がずれてしまっています。

何を選択するべきかは、もちろん人によって違います。お金もないよりはあっ たほうがいい。でも、お金のために拘束され続けるより、自由を選ぶことで、実 はより豊かなライフスタイルを築いていくことは誰にでもできます。

皆さんには健全なバランス感覚を持ってほしいです。時間とお金に関する正し い考え方を身につけ、必要な知識を持つことは、PTライフにおいて非常に重要 です。

4-2 地域格差、通貨格差を利用したお金の価値の高め方

日本の給与所得者の平均年収が、国税庁のデー夕で412万円、これはあまりに も雇用形態を平準化しているので、ここでは600万円前後とします。それだけの 収入を確保し、PTライフに移行すれば、逆に生活コストが下がり、可処分所得 が増えるケースもあります。厚生労働省が発表した2011年の都道府県別の所定 内給与(月額)の平均額(速報)では、東京が全国でー番高い37万2,900円で、 最下位の青森は、22万2,200円。順位が下がるにつれて、物価や家賃も安くなり ます。

そこで、たとえば仕事は東京でしながら、生活の拠点はもう少し家賃や生活費 をおさえることができる地域に置くと、東京で暮らすのに比べ、同じ収入を得な がら、家賃も生活費も半分で済ませることも可能なのです。

この生活コストの差をうまく利用するのが、PTライフを実現させる一つのノ ウハウです。たとえば東京の場合、働くのは港区で、生活するのは家賃と物価が 安い下町。交通の便さえよければ、さらに遠方も視野に入ってきます。駐車場1 台分借りるにも、東京の都心であれば月3万円は下りませんが、都内でも練馬区 あたりであれば、月2万円で駐車場が借りられます。

海外の話をすると、物価が安いニュージーランドでは、自宅で野菜やハーブ、 果物を育てたり、海や湖で魚を釣ったりすることで、夫婦2人の生活であれば年 間150万円以内で十分暮らせます。たとえば、ポンド高の時には、ポンドで稼 ぎ、生活はマレーシアといった生活スタイルをとることで、円安の時、円で稼ぎ マレーシアで生活する場合と比べ、格段に可処分所得が増えるという錬金術もで きます。

地域格差を利用するのと、それに加え、通貨格差を利用すれば、使えるお金は 同じお金を稼いだ場合でも、お金の価値を高めることができるのです。格差を利 用する方法は、アービトラージといいますが、あらゆるアービトラージを利用 し、組み合わせることで、ライフスタイルをクリエイティブにできてきます。

4-3 お金の遣い方のトレーニング方法

PTライフを始めるにあたって「ベース」となるお金について、どのくらいの 額が必要かという質問がよくありますが、その答えは、さまざまな無駄をそぎ落 とし、自分が本当に必要な額を見極めるという能力をつけることでしか見いだせ ません。その能力が、自由になるために必要になってくるのです。

それでは、PTライフのお金の遣い方・考え方を述べていきましよう。PTライ フにおいては、「稼ぐ、投資する」ことよりまず、

・お金に対する考え方や知識が大切

です。思考を変え、知識をインプットする前に、まずは、「お金はあればある ほどよい」という考えをリセットしましょう。

お金と時間の考え方を身につけるためにも、トレーニングは有効です。まず はお金についてのトレーニングですが、本格的なPTライフを送るようになれば、

クリエイティブ力と生産性が上がり、最終的に収入が増えていきます。

1つ目のお金のトレーニングとして、家計簿をつけましょう。これはお金をや りくりするためではなく、遣い方のトレーニングのための家計簿です。PTライ フの準備を始める上でまず大切なのは、お金の稼ぎ方を知ることよりも、自分の お金の遣い方を徹底的に分析することです。最低いくらあれば自分は生きられる のかを把握します。

お金の遣い方は習慣です。自分の遣うお金が、「投資」「消費」「浪費」のどの カテゴリーなのか、カテゴリーをわかった上でお金を遣う習慣をつけるのです。

「投資」にはリターンやロスがあります。「消費」は遣うとマイナスになる必ず遣 わなければいけないお金で、「浪費」は無駄遺いで、なくてもいいものに使って しまう遣い方になります。浪費はすべてカットし、消費はできる限り抑える努力 をすることが大切です。

遣い方がわかっていないと、いくら入ってきても出て行くばかりで、いつまで たっても投資ができません。自己投資や貯蓄をどう配分していくか。この場合、 収入は右肩下がりになると想定したプランを作ります。いざ本当に収入が減った り、予定外の出費があったりなど、ストーリーが変わった時でも対応できるバッ ファを残しておくためです。

苦しいからといって、何もかも一律にカットするのはよくありません。何にお 金を遣い、それによって、どんなリターンを得るのかという思考をつけていくこ とが重要です。無駄を削り、自分への投資に回すことを続けていくことが大切で す。

2つ目のお金のトレーニングとしてお勧めしたいのは、今の半分の生活費で暮 らしてみること。生活費として月20万円使っていた人なら10万円でやってみる。 仮に今、収入が増えていても半分で暮らすトレーニングをしてみてください。目 的は節約ではありません。極端に少ない生活費で、工夫して楽しく生きる訓練を することで、お金のことを真剣に考える訓練にもなります。

10万円の予算で仕事ができない人は、1億円の予算があってもできません。 「もっと予算がないと、ベストの仕事ができないんです」と言う人に限って、大 きな予算を渡されても活かせません。絶対に無理そうな少ない予算で工夫ができ

る人こそ、本物のできる人です。

生活も同じです。1人2万円のレストランに行かないとおいしいものは食べら れないのではなく、探せば500円でも「おいしいもの」は見つかります。予算ゼ ロで楽しいデートも可能です。工夫しない人間になってしまうと、予算がいくら あっても足りなくなり、永遠にPTライフは送れないでしよう。これをまずは1週 間やってみてください。それを1 ヵ月続けます。そして、1年間通してトレーニ ングとしてやっていると、いろいろな体験をしながら、PTライフに対応ができ る基礎がつきます。

つまり、お金に対する考え方が変わり、工夫する知恵とお金が貯まります。な により、より自由になります。たとえ本当に給料が下がったとしても、動じずに いられ身軽になれます。給与に関係なく生活レベルを下げれば、「給料は下がる けど、魅力的な生活」が可能になります。

生活費を半分にするのが無理であれば、天引きトレーニングが効果的です。サ ラリーマンの場合、税金や社会保険料、厚生年金が給与から天引きされていま す。額面で「自分は年収700万だ」と思いながらも、手取りは500万円ほどで暮 らしているのが現実です。天引きされる200万円は、最初から引かれているので 仕方ないと割り切れます。

北欧の国々は、収入のおよそ半分以上が税金でもっていかれます。その分、社 会保障も充実しています。 フランス、イギリスも4割近くです。さらに租税負担 率と社会保障負担率を合わせた国民負担率でいうと、北欧は7割近くになります。

自分も北欧と同じような状況を作ってしまうのです。これも、1 ヵ月からス タートしてみましょう。1年間、給料の3割を天引きしてみると、さまざまな変

化が現れます。まず、今までのお金の遣い道は何だったのか、改めて考えさせら れるでしょう。

「あったら遣う」という考え方から「お金があったら遣わない」という考え方 が定着してくると、無駄遺いも減ります。そうすると貯金が増えます。プールさ れたお金は、自己投資に充てることができ、ひいては自分力が増してくるので す。

4-4 戦略的クレジットカードの活用法

クレジットカードを何枚も持ち歩くのは意味がないことです。必要最小限の カードを戦略的に持つ卜レーニングをしましょう。カードのサービスを徹底的 に見極めることが大切で、たとえばアメリカン・エキスプレスはもともと世界最 大の旅行代理店の一つなので、本質は旅行の時に役立つカードです。移動が多い PTライフに役立つ付帯機能が多くついていて、航空チケット、ホテル、レスト ランの予約のほか、盗まれたり、紛失したり、スキミング被害にあったりなどの トラブル解決等の秘書機能が充実しているので、とても便利です。

クレジットカードを持つメリットのもう一つのポイントは、旅行傷害保険で す。これがが手厚いものを選ぶということです。つねに移動するPTにアクシデ ントはつきもの。とくに海外だと医療費が高額で、いざというとき多額の出費と なりかねません。

日常持ち歩くカードとオンライン決済用カードを分けておくと便利です。 万一、持ち歩きカードを紛失したときも、オンライン決済の登録情報を変更せ ずにすみます。ステイタスでカードを持つ人もいますが、PTライフをするなら、 サービスと機能で選びましょう。年会費など、人を雇ったり保険に入ることを思 えば安いもので、それぞれのサービス内容を徹底的に分析し、自分に合ったもの を使い倒すことです。とはいえ、たくさんあるサービスや機能は忘れないよう に、自分に関係がありそうなものはスマホ等にメモし保存しておくことで、いざ という時に役立ちます。

4-5 ノマドから学ぶ暮らし方のトレーニング

お金と連動して、PTライフにふさわしい暮らし方のトレーニングとして、暮 らしのトレーニングがあります。PTライフは、いわば移動して生きる遊牧民(ノ マド)から学ぶべきものが多々あります。ノマドは、モノを多く持ちません。住 まいも、畳んで運べるコンパクトなテントやゲルです。過剰なモノがあれば移 動の際に負担になります。PTライフにも、遊牧民の身軽さが必要です。そして、 実はモノを減らすことによって、増えるものがたくさんあるのがPTライフです。

シンプルな暮らしを求めていくと、限られたなかで楽しみを見つけるようにな ります。たとえば、北欧の家具は同じデザインが何年も使われます。アルネ・ヤ コブセンのように、長く愛され、今見ても新鮮なプロダクトも多くあります。北 欧のデザインは、ミニマムかつシンプル。文化そのもので、簡素な中に機能性と 快適さが備わっています。

北欧の人は、モノでなく経験に時間やお金を費やします。寒い冬が長く、家に いる時間が長いために、衣食住でいうと住に関して手間やお金をかけ、衣食に 関しては質素です。ノルウェーでは多くの人がサマーハウスを持っていますが、 10キロ四方誰もいない人里離れた場所がざらにあります。電気はなく、水道も 水を汲んで使います。意図的に「持たない暮らし」を楽しんでいる北欧には習う ことが多くあります。

選択肢やモノが多いと、いろんなことで悩んでしまいますが、なければないだ け悩みも減り、モノがなければないほど、シンプルな人生になっていくのです。 減らすこと、シンプルになることが豊かさにつながり、幸せが増えていく時代で す。北欧のシンプルさに習って、家の中のモノを思い切って処分しましょう。

私たち日本人もそもそもは質素な暮らしが得意でした。食べ物も、メザシ、ご 飯、味噌汁と、いたってシンプルな食生活で、世界一長生きする国になったので

す。それが、ステーキだ、フランス料理だと食生活が贅沢になると、コレステ ロールも体内に溜まり、生活習慣病を引き起こしていくことになるのです。

引っ越すことを苦と思わず、楽しんで引っ越しをすることも、PTライフを謳 歌するコツです。引っ越すことの利点はいろいろとあり、まずモノが一気に整理 でき、強制的に減らすことができます。 引っ越しは、「所有するモノを半分にす る」というトレーニングにもなります。モノを抱えこんでいると、家も整理され ず、気分も澱み、悪いスパイラルに入ってしまいます。身軽でないと動くのも億 劫になります。いっそ極端にやったほうがいいのです。

モノを減らし、身軽になり、移動に対する抵抗を減らす。自由なPTライフを 実現するために、引っ越しはいいトレーニングとなります。住み慣れたところは 快適だし、愛着がありますが、安住の地ができたらあえて壊すことに意義があり ます。引っ越しは、その都度自分自身をリセットし、心身ともに新たな気持ちに なれるので、そこからまた新しいクリエイティビティが生まれてきます。

「親の代からこの家で、もう30年住んでいます」というのが日本式でしょうが、 自分に合うライフスタイルや仕事を求めて、国内どころか海外にも引っ越すこと に戸惑いを感じなくなることが、PTライフの考え方でもあります。

5. クリエイティブ力をつける

5-1 クリエイティブ力アップには視界と頭の中からノイズを減らすこと

自分がやらなくてもいいことを、自分でやってはいけません。クリエイティブ でないことに時間を使わないようにしましょう。1日のうち「クリエイティブで ないこと」に費やしている時間を検証し、排除していきます。たとえば、ゲー ム、飲み会、LINE、長電話等々、これら無駄な時間が1日にどれくらいあるか検 証してみましょう。意外とこの無駄な時間の前後も無駄になっているのです。

ゲームをした後は、暫くゲームのことを考えてしまいます。次はどうしようこ うしようと。

飲み会では、出会った人とのコミュニケーションは楽しいですが、飲み会が終 わった後のコミュニケーションでも時間がとられてしまいます。LINEもひっき りなしにやりとりが続くケースもあり、何かに集中しようとすると「ビーッ」と 鳴り、ついついスマホ画面を確認してしまいます。それは、せっかく集中して何 かを始めようと思っていたのに、集中力を寸断してしまうばかりか、集中する流 れでクリエイティブ力が発揮できるのに、クリエイティブなことに時間が使えな くなってしまうというデメリットがあります。

クリエイティブ力を発揮するための時間の管理方法ですが、コミュニケーショ ンを自分のペースに持っていくという考え方で物事を進めてください。自分が振 り回されるのはなく、相手を振り回すと言ったら大袈裟ですが、相手の行動で一 喜一憂せず、自分のペースで淡々とこなすことが大事になってきます。

一方、自分一人で何でもやる体制を作っていく必要があります。組織を作らな いで一人でやっていくと、雑務が増えます。しかし、それをぎりぎりの最小限ま で減らすことも、PTスキルの一つです。ビジネスにつきものの経理も、アウト ソーンングをお勧めします。まったく会計の知識がない人が学ぶことを目的に一 度自分でやってみるのはいいのですが、マス夕ーしてしまえば、単純な入力作業 に時間をかけるのは無駄です。ビジネスをやっていく以上、整理されたデー夕を 見たり、財務諸表が分かったりすることは必須ですが、入力作業はそれ以前の 話。そこから新しく生まれるものはありません。

月数万円くらいの経理サービスはいくらでもあります。人を雇って月20万~ 30万円の固定費がかかることを考えれば、そう高いものではありません。空い た時間でクリエイティブなことをすれば、もっと自由度も上がり、外にも出ら れ、移動しなから仕事ができるようになり、生産性もあがります。

視界と頭の中からノイズを減らすと、思考が急に鮮明になり、すぐにでも目の 前のことに手を付けたくなってきます。ノイズを減らすとは、余分なモノを処分

して、余計なモノは増やさず、まず身の回りをシンプルにするということです。 ひとたび手を付ければ、あっという間に時間が流れ、胸の奥が発熱し、ワクワク してくる感覚を思い出してください。それが本当の意味での、クリエイティブな 時間です。

アインシュタインの相対性理論も同じで、嫌な奴と一緒にいる時間と好きな子 と一緒にいる時間では、同じ時間でも前者は長く、後者はアッという間に時間が 流れます。これが最も相対性理論をわかり易く説明したフレーズですが、実際ア インシュタインが記録したメモにも残っていることなのです。

そして、アインシュタインはクリエイティブに関することにもコメントを残し ています。

「創造力は知識よりも尊い。知識では一人の人が地球を包み込むことはでき ないが、創造力ではそれができる」

人生はクリエイティブに生きなければいけない。人間の価値はクリエイティブ なのだと。クリエイティブな時間をどれだけ持てるかが人生の質を決めます。自 分を劇的に変えるためには、まずシンプルでミニマムな空間を作ることです。そ のことでクリエイティブ力が鍛えられ、それが人生の価値になってくるのです。

5-2 「いつか片づけしよう」から「今すぐ捨てる」へ。

家にあるものは、基本どれも自分や家族が選んで手に入れたモノです。愛着も あるし、なかなか捨てられないモノばかりでしょう。「いつか使えるかもしれな いから」と、とっておきたい気持ちはよく分かります。「もう二度と手に入らな いモノだから」という言い訳をくり返し、一生保管し続けるモノもあるかもしれ ませんが、捨てる基準はシンプルに行くことが重要です。

今、使っていないモノは捨てる。即座に売るか、譲るか処分する。迷ったら捨

てる。 そうすると、自分の人生の優先順位はつねに変わっていき、変化に対応でき、

同時に必要なアイテムも変わり続けます。お勧めは半年に1回、たとえば正月と、 6月1日の衣替えの日を「頭と心をきれいにする日」と決めて、荷物を総点検し、 部屋の模様替えをしてみること。

みそぎ 日本人は昔から、年に2回 禊 を行い、心身を清めていました。神社に行くと、

毎年6月30日と12月31日大祓いのお祭りを行っており、半年で蓄積した悪い気 を追い払い、自分自身に知らず知らずに染みついた穢れを落とすため、人の形を した和紙に穢れを移し、身も心も頭もキレイにしてきました。この大祓の儀式は 今でも神社で執り行われています。この儀式の後は、とてもすっきりとした気持 ちになりますので、一度行かれてみるといいでしょう。

使いたい時に、手元にない。それは不便な暮らし方に思えるかもしれません。 買い置きをやめれば、使いたいときにその都度手に入れないといけないし、安い ときにまとめ買いしておかないと高くつくという考え方もあります。

でも本当に不便で困ったことってどれくらいありますか? まとめ買いしたモ ノはいつも気持ちよく使い切れているでしょうか。なかなか使わないモノに大事 な居住のスぺースを奪われることは、無駄なモノにエネルギーと家賃を浪費して いるのと同じです。

実は、ほとんどのモノは手元に保管しなくていいものばかりなのです。たとえ ば、近所のコンビニを大型の冷蔵庫、Amazonを巨大な書庫と捉えてみると一気 に楽になります。どちらも「膨大な数のアィテムを、1つ何円というコストで常 時保管してもらっている」と考えれば、本や日用品などのストック癖から解放さ れます。あらゆる店を外部倉庫と位置づけ、本当に必要になときだけ取りにい く、もしくは取り寄せると、「買っておかなきゃ」という強迫観念から自由にな り、今まで収納と探し物に奪われていたエネルギーと時間のロスがなくなりま す。

すると心が自然と整い、自分と向き合えるようになってきます。モノをむやみ に保管しないということは、自分の心を大切にするということと同じなのです。

「今、買っておいたほうがいい」から「必要なときに取りに行こう」へ意識を変 えるだけで気持ちが楽になります。

PTライフを始めるうえで、このうように必要最低限のもので生活していくク セをつけることで、日本にいながらにしてPTライフの準備をすることができ、 本番に活かされます。シンプルな生活は、PTライフを目指しているからやると いうことではなく、普段からシンプルライフを心掛けることで無駄をなくし、集 中したいことに集中でき、非常に効率的な生活ができてきます。

モノ、人、仕事、お金、そして水。なんでも、一ヵ所にとどまらせていると、 次第に淀みはじめます。それはやがて、あなたの思考と人生を濁らせることにも なります。自然界では何事も循環するように、人間が呼吸や生活の中で排出した 二酸化炭素を植物が光合成で酸素に戻すように、身の回りにあるモノも、人も、 より必要とされている場所へ行くべきですし、どんどん循環させることで、自然 に調和する生き方が習得できます。

あまり使わなくなった道具があれば、それを喜んで使ってくれる人を探しま しょう。今やっている仕事で、それをやってみたい人がいたら譲ってあげましょ う。チャンスがやってきたら、そのチャンスを待ち望んでいた人に渡しましょ う。

素敵な人に出会ったら、より付き合いが深くなりそうな人を紹介してみましょ う。すごいアイデアを思いついたら、一番うまく活用してくれそうな仲間に話し てみましょう。最終的には、自分の手元からすべてなくなる不安があるかもしれ ませんが、実は、与えたものは、何倍にもなって戻ってくるのです。


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